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□はじめの一歩
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エリックと想いが通じ合ってから、かれこれ1ヶ月が経とうとしている。
が、おれ達の関係は何も進展していない。

口づけはおろか、手すら握っていない。
むしろ、今までの、ただの先輩後輩だった頃の方が距離が近かった気がする。

エリックは、それなりに女性との付き合いもあったはずだし、手が早い
・・・という噂も聞いた事があったので、
未だに自分に触れてこない事に、最近疑問を感じ始めた。


告白したけど、やっぱり男は無理、って思ったとか?
ただ、おれをからかいたかっただけ、とか?
このまま、無かったことにしたい、とか?

そんな悩みを抱えはじめた頃、


「なぁ、アラン」
「何?」
「今夜、家来ないか?」

二人で魂の回収任務を終えた帰り道、エリックがさり気なく言ってきた。

「君の家に?行っていいの?」
「もちろん」
「それじゃあ、お言葉に甘えて」

もしかしたら、何かしら進展があるかも、そんな風に思ったおれは、
よろこんで了承した。
おれの返答に、エリックは破顔した。

「よし!じゃあ、報告書さっさと書いて定時で帰るぞ!」
「毎回そうやって報告書、書けばいいのに。そうすれば、月末苦しまなくてすむよ?」

協会内ではエリックに敬語を使うが、二人きりなので口調も多少くだけた感じで話す。

「なんつーか、毎回報告書書くの面倒くせぇんだよ。それに、アランが手伝ってくれるからな」
「毎回手伝わされるおれの身にもなってくれ」
「だって、堂々と一緒にいられるんだぜ?」

もしかして、エリックが報告書を溜めているのは、ワザとなのか?その可能性に思い至り、

「もう・・・ばかっ」

アランの白い首筋が、仄かに染まった。

照れる俺にエリックは楽しそうに笑った。
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