書庫
□光
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俺の名前は、エリック・スリングビー。
職業、死神。
死神、というのは、ひどく頑丈な身体の持ち主で、よほどのダメージをくらわない限り死ぬことはない
・・・それを知った時の俺の気持ちが、わかるだろうか。
終わりの無い生。
中には喜ぶ奴もいるだろう。
けれど、俺には、光の差さない、真っ暗なトンネルを、これからずっと歩かねばならないという、絶望しかなかった。
・・・あいつに会うまで。
「なんで俺が新人教育しなきゃなんねぇんだ」
もっと、適任者がいるだろうに
ガリガリ、頭を掻きながら、新人が待っている部屋に向かった。
指定された時間は、とうに過ぎている。
誰か気の利く奴が、代わりを勤めていてはくれないだろうか、そんな淡い期待をしながら、ドアを開けると、
部屋に一人ぽつん、と残っている奴がいた。
姿勢良く座っていたが、俺の姿を認めると、スッと立ち上がった。
ほっそりとした、やや小柄な青年。
濃茶の髪、顔は死神のトレードマークの眼鏡でよくわからないが、野郎の顔に興味はないので、どうでもいい。
「あー・・・遅れて、すまん。その・・・運が悪かったな。俺みたいなのが、教育担当で。
なんだったら、上に言って変えてもらっても」
いいんだぜ、そう続ける前に、新人が口を開いた。
「いいえ。運が悪いなんて、そんなことありません。おれは、あなたが自分の担当だと知った時、とても嬉しかったんですよ。エリック先輩」
名前を呼ばれ、軽く目を見張る。
「俺の事、知ってんのか」
「もちろんです。あなたの事を知らない新人なんていませんよ」
俺は鼻を鳴らした。
「どうせ、俺みたいな遅刻常習犯にならないように、とか、そんな事言われたんだろ」
「そういう話も、多少・・・でも、おれが聞いたのは、もっと違う話です。エリック先輩は、すごく仕事のできるひとだ、と。
だから、そんな風に言われるあなたが担当になってくれて、嬉しかったんですよ」
そう言って、ふわ、と笑った。
その笑みは、嘘偽りを感じさせないものだった。
「そうか・・・じゃあ、短い間だけど、よろしくな。ええと・・・」
事前に資料を渡されていたにもかかわらず、ちゃんと目を通していなかったので、名前がわからない。
「アランです。アラン・ハンフリーズ。よろしくお願いします。エリック先輩」
「よろしく、アラン」
握手を交わした。
温かな手だった。