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□5、狼の胸の奥
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「うん・・・よくわかんない・・・。」
私がクザンに出した条件は「島にいる人たちを、すみやすいどこかの島に連れて行って欲しい。」というものだった・・・はずなのだ・・・
「なんで皆あの島から出たくないんだろう・・・。」
皆、相談したかのように口をそろえて、
『私たちはここに残るわ。』
と、にこやかに断られた・・・。
「まぁ、分からなくはないけどね・・・。」
「えっ!クザンはわかるの?!」
「まぁ、アレンちゃんの倍は生きてるしね・・・さすがに分かるけどさ・・・。」
なんでだろう・・・やっぱり分からない・・・・。
「むー・・・」
「ま、アレンちゃんも分かるようになるよ。」
悩んでいると、頭をなでられた。
すごく・・・嬉しいな。
けど、胸の奥がきゅぅってなって、ちくりと痛い・・・。
やっぱり、わかんない。
「んー?」
「どうしたの?」
「ううん、なんでもない。」
「そ。」
「うん。」
そしてまた海の向こうを見つめる。
水平線って・・・こんなに綺麗なんだ・・・。
「綺麗・・・」
「アレンちゃんは飽きるほど見てきたんじゃないの?」
「ううん、私、船の底にいたから。」
。