読み物

□さざなみ
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雑踏を歩いていると、前にいる女の子たちが上を見上げて声を上げた。



「あっ!見て!」

「えっ、なにこれ?新曲!?」



つられて私も上を見る。

彼女たちの視線の先には、よくCMなんかが流れている巨大スクリーンがあった。





そこには整った顔立ちの5人組アイドルグループが映し出されている。



テロップには『Waveニューシングル』の文字。





「これって来週発売のシングルじゃない?」

「うわっ、ちょーラッキーかも」



先ほどの女の子たちの会話が聞こえてくる。





スクリーンの中で彼らが躍りだした。







軽快なステップと共に聞こえてくる歌声。





皆を魅了する笑顔。





すべてに引き込まれていく。









けれど不意に、センターで踊っていた子がひとりだけみんなと違うステップを踏んだ。



その途端にみんなの動きが止まって、センターの子が顔の前で手を合わせる。

周りのメンバーに小突かれながらもダンスの確認をしていた。





どうやらこれはメイキング映像のようだ。







仕切り直してもう一度ステップ。



今度は乱れることなくキレイなダンスがきまった。





冒頭のサビが終わると、シングルのタイトルと発売日が映し出される。









「もー、ちょっとかっこよすぎ!」

「ステップ間違うとか、らしいよねー」

「謝ってるのちょー可愛いよ」

「予約した方が良いかなー?」

「アタシもうしたよ?ポスターが先着でもらえるし」

「うそ!マジ!?一番近いとこってドコだっけ!?」

「ここからだと駅前?」

「早く行こ!」







女の子たちが走り出す。







もう一度見上げると、そこにはすでに別の映像が流れていた。





(Wave、か……)



短い映像だったけど、人を笑顔にしてしまう彼ら。









まだうろ覚えの曲を小さな声で口ずさむ。



さっきよりも心の中が軽くなっている気がして、私は自然と笑みをもらした。







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