庭球 長編

□序章
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「さあ。君の望みをいいなさい。必ず私が叶えてあげる。」

とある空間でその存在はひたすらに甘美にひたすらに魅力的に目の前に座る女に言葉をかけた。その声はまるで呪文のように女の耳朶をふるわせる。

「君の望みは崇高だ。確かに対価は高いだろうが、君の幸せの糧になるなら対価も幸せだろう。君の幸せは世界の幸せなのだよ。」

「さあ、世界を幸せで満たそうではないか。」


それは、狂気ともとらえられる宣言であった。だが、その存在の異常さと甘美すぎる声と、何より女の中にある強い強い望みが女から正常な思考を排除していた。そして女は己の望みを口にする。

「私のねがいはーーー」

存在の口に狂喜を孕んだ笑みが浮かんだ。
 

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