進撃 長編

□849年
1ページ/10ページ

コツコツと技巧科の廊下をブーツを鳴らしながら早足で歩く。技巧科・技術団の本部は研究所も兼ねてあるため、時折異臭や爆音、破壊音が響き渡り、所々穴が開いたり溶けていたりするが、4年もたつと何の感情も浮かばない。

ウォール・マリアが陥落してから約4年が経過した。この4年間中央政府は駐屯兵団
調査兵団・技巧科・技術団の要請を経て壁の強化と巨人の生態調査に大きく資金を裂くようになっていた。特に壁を守る駐屯兵団と、武器の生産・開発を一手に担う技巧科はその必要性を買われ若手の育成にも資金を裂けるようになっていった。各組織の下部組織に当たる訓練兵団もかつての貴族の義務による入団または変わり者の入団する組織から入団するのが当たり前であり、入団しないものは腰抜けという一種の風潮のあおりを受け、入団者は4年前に比べ倍以上になっていた。
そして今日、名無しさん=イエーガーもとある任命を受けるため、技巧科のトップ・フルイエル=ルーラの元を訪れていた。

「失礼します。ルーラ団長。名無しさん=イエーガー参上しました。」

古さの目立つ技巧科・技術団・団長室の扉をノックし、しわがれた了承の言葉とともに名無しさん は入室した。
中に入ると小柄すぎる団長の身の丈と同等の机の前にルーラはちょこんと立っていた。はっきりいて4年前からこの老婆の姿は変わっていない。頭の回転も技術者としても最高ランクに位置する才女はこの4年間その才能を遺憾なく発揮した。そして今回名無しさんに一つの役職を与えるために彼女は名無しさんをこの部屋に招いたのであった。

「待っておったよ名無しさん=イエーガー。そして今日より技巧科・技術団 第4室班長に任命する。人類のためその心臓をささげよ。」

「謹んでお受けいたします。」
右胸に拳を当て、名無しさんは敬礼した。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ