夢の欠片

□何かの始まり
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「ふぅ…。」
不意に人間の溜め息が聞こえた。
少年のような、そして少し高い声だ。
「ねぇ、これからどうする?」
別の声が聞こえた。
更に若い感じのする、男の子のような声だった。
そして、最初に聞こえた声が静かに語りだした。
「さぁね、どうしようか。」
「やることもないし、前の国でもらった地図を見てもしばらくは国なんてないじゃん。
ここから先はずっと森ばかりだし。
あると言ってもこの森からはだいぶ距離が離れているし…。
このままだと退屈すぎて死んじゃうよ。」
「んー、そうだなぁ……。
…良い考えが思いつくまで…………。
特にすることもないから…。」
「ないから?」


「寝ることにする。」
「はい?」
セグは荷台の上にあった帽子を軽くかぶり、一番近くにある二本の木へと近付いた。
そして、手に持っていた玉を持って開いた。
それは、ロープと細かい網で作られた簡単なハンモックだった。
両方の木の枝に手際よく結んで、空中に吊す。
腰の後ろの拳銃をホルスターごと取り外した。
「………。」
セグはしばらくそれを無言で眺めた。
四角いバレルのついた拳銃が、ホルスターにほとんどむき出しで収まっている。
セグはこれを『霧の民』と呼ぶ。
その後、セグは『霧の民』のホルスターを、お腹の位置でベルトに取り付けた。
「天気もいいし暖かいし。
たまには昼寝もいい。」
セグはハンモック中央に腰掛けて、ひっくり返らないようにしながら、両足と上半身を寝かせる。
ハンモックは少し揺れて、やがておさまった。

「何かあったらよろしく。」
ティルスに言い残し、セグは帽子を額にのせた。
「やれやれ。どうするんだろうね。」
すぐに寝入ったセグを見ながら、ぽつりとティルスが呟いた。




セグは、船の上にいた。木で作られている丈夫そうな船だった。
海独特の潮風の香りと湿気でセグの意識が覚醒した。
そしてそこが船の上であるということと同時に夢であることも理解した。
ただ、夢にしては感覚や景色が鮮明だということに疑問を抱いた。
しかし、ここで黙々と悩んでいるだけでは何も始まらない。まずはこの船を調べてみる必要がある…。
そう踏んだセグは探索を始めた。


まず、自分の周辺のものから調べ始めた。
いつ襲われても攻撃できるように、腰の後ろにあるホルスターから拳銃を抜いた。
そして一つ一つ慎重に、辺りに気を配りながら調べていった。
周囲の探索が終わると、今度は船自体を調べ始めた。
「どこもしっかりと整備されている…。
目立った外傷もないし、手を抜いていないってことか…。
あちこちに幾つか部屋もあったし、船の床とかも全部掃除されている……。
つまり最近まで…。
……違う、今もいるんだ。
でも人の気配が全く感じられない………。
港にでも行ってるのかな。
…でもこれだけ船が大きいなら、まだ他の場所に何かあってもおかしくはない……。
となると、考えられるのは…。
今ボクが立っているこの下にも部屋がある可能性があるってことか………。
何があるかは知らないけど…、やってみる価値はありそうだね……。」
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