短編集

□反抗期
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注意
リンレン
ツレデレリンちゃん




僕の姉はどうやら反抗期というものに突入したみたいだ。
一度口を開けば僕を罵倒する言葉が止まらない。
「バカじゃないの?」
「…話しかけないで」
「視界に入らないでよ」
「死ねば良いのに」
なんて言葉は日常的に聞いている。
僕の何が彼女の神経を逆なでするのか分からないけどね。
姉は数分違いで生まれた双子の姉ということもあり、ずっと一緒の生活を送っていたから僕のことを嫌いなのかな?
家族なんだから仲良くしたいってのが僕の本音だけど、姉ちゃんが僕を嫌いなら無理して仲良くしなくても良いか。姉ちゃんのためにも。




地球の中心で大声で言えると思う。
私の実の弟が可愛すぎて死ねる!ってね。
そう、私の弟は可愛すぎるのだ。ふとした仕草も柔らかい微笑みも全て可愛い、国宝級。
最近弟の可愛さは急上昇してきて目を合わせることすら辛くなってきた。
目を合わせると、何か襲ってしまいたくなる衝動に刈られてしまうから。
勿論、襲いたいという気持ちが芽生えること自体変なのは理解している。
でもこの気持ちは止まらない。
だから、私はふとした瞬間に襲ってしまわないように自分を制御することにした。
レンに反抗して、侮辱する言葉を沢山投げてレンを傷つけることによって理性を保とうとしてきた。
けど、やっぱりそれは無理だって思い始めてきた。
レンは私が突き放すと一瞬悲しそうな顔をして近寄らなくなって、私が悲しくなるからそれはキツイ。
私はもう弟を傷つけたくないから、変わりたい。反抗期を止めて、弟の笑顔を見たい…んだけどそう簡単にいかない。

「好き…なのに…」
ぼそりと呟いたと同時に扉が開く音が聞こえた。
勿論、入ってくる人が誰かは分かっている。ここは弟の部屋だから弟しかいない。

「姉ちゃん、好きな人いるの?」
想っていた弟の声が聞こえてきゅんっと胸が高鳴ってから、事態を察知して大きく飛び跳ねた。
抱き締めていたレンの枕を照れ隠しで思いっきり投げつけてから叫んだ。
「うぇぇぇ!?あ、あんた何でここにいるのよ!?」
「それは僕のセリフ。ここは僕の部屋だよ?」
「そ、そ、そんなこと知らないわよ!」
ああ、どうして私はこんなことしか言えないんだろう?レンが変な顔で私を見ているよ。
ここは弟の部屋だからレンが入ってくるのは知っているけど知っていて入ったなんてバレたら、恥ずかしくて死んじゃう。
「分かったから。暴れないで出てってよ」
レンが邪魔な物を相手するように私の前を通って荷物を下ろした。レンの冷たく放った言葉が胸に刺さって痛い。
私が暴れたのが原因なのは分かってるけど、そんな目を向けられると悲しい。
やっぱり私がレンに向かって悪いことばかりしてきたから嫌いになっちゃったの?
「ほら…ってどうしたの?」
私を促すように立ち上がらせたレンが不思議な顔をしている。
間近に大好きな弟の顔があって悲しいくらいに想いを吐き出したくなった。

「レ、レンのばかぁー…何で私のことを嫌うのよ。…ひっく、私が悪いことしたのが…原因だとは思うけど…そんな目で見なくたって良いじゃない!…うぁぁー」

想いだけじゃなくて涙まで込み上げてきて顔がぐじゃぐじゃになっていると思う。
ひっく、ひっくと涙を啜りながらレンがどんな表情をしてるのか分からなくて、怖くてただ震えていた。
「ぷっ、ふふふ…あはははは」
「へ?」
顔を上げると弟はお腹を押さえてスゴく笑っていた。
思わず自分が酷い表情をしているんだと思って顔を隠しながらも、照れ隠しにレンを罵倒する。
「ば、バカじゃないの!?何で笑ってるのよ…!」
「いや、姉ちゃんの反抗期の理由が面白くてさ…っふふふ」
「笑うなー!!」
ポカポカとレンの胸を叩いているはずなのにまだ笑っている。うん、レンの胸を叩いたこの手は暫く洗わないでおこう。

「僕、姉ちゃんのこと嫌いじゃないから」

軽くはにかんで言ったこの言葉が、ずきゅーん!と私の胸に響いて吐血しそうになった。
何その笑顔反則、ぐはっ。
私が苦しそうに悶えているとレンは意地悪な笑顔を見せてから私の耳元で囁いた。
「姉ちゃん、可愛いね」
レンが囁いた耳元から順に熱が集まって痛くなってくる。
「な、な、な、、あんた私達姉弟よ!?何言ってるのか理解しているの!?」
「うん、面白い」
レンがペロリと唇を舐めたその仕草が可愛すぎて、可愛すぎて本気で死んでしまうと思った。
「な」
「これから楽しみにしててね。姉ちゃん」
そう言う弟の顔はとても可愛くて私の限界はここでやってきた。頭に血が昇りすぎてぶっ倒れた。

どうしよう。
弟に嫌いじゃないことを伝えられたことは良かったものの前途多難な気がする。
レンが可愛いだけじゃなくて、格好良く見えてきちゃう私の目が更に自分を追い詰めているのは分かっているんだけど止められない。
でも、弟が可愛いから許す。




*
あとがき
リンちゃんはツンデレが一番美味しいと思うのは私だけでしょうか。あ、やっぱりリンちゃんは全てが可愛いですね。
最終的にはリンレンじゃなくてレンリンになりかけてしまいましたが、きっとリンちゃんなら翻弄してしまうんでしょうね。

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