短編集

□ガラスの落とし物
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「あー、お姫様来ないかなー?」

金色の王子がぼやいた。
今日は舞踏会。
勿論、沢山の姫が王子の為に現れていたが目を引くような女性はいなかった。
どれも同じ様な顔で下心ばかり。

「つまんねー…ん?」

突然、会場の空気が変わったような気がした。
騒がしいのは変わらないが、誰か…綺麗な姫が入ってきたのか?
遠くからでも分かる、姫の美しさ。
金色のショートカットが王子の心を擽った。

「なあ、俺。あの子に決めた!」
「え、王子?」
「決めたら絶対だ。俺の嫁にしてやる」
「ちょっと、王子!」

執事の声は王子に届かず、王子はその姫の元に向かった。

目の前で見た彼女はなお美しい。
着ている洋服は派手とは言えないモノだが、それすらも輝いて見える。
彼女自身が輝いているからか。


「お嬢さん。私と踊りませんか?」

かしずいて、手を伸ばす。
すると彼女は目を丸くしてから微笑んだ。
その笑顔が可愛すぎてほわほわしていると、予想外のモノが飛んできた。

彼女の張り手だ。

彼女の掌と王子の頬が、ぱあんっ!と良い音を奏でた後、他の姫達が騒ぎだした。
何が起こったのか理解できないといった風に皆騒ぐ。
それは王子も同じだった。
王子という立場に産まれたが故に、人から叩かれるという行為は知らなかった。
だから動揺していたし、また、新たな感覚が芽生えたことに気がついた。

「気安く、近づくな」

冷淡に言い放った彼女の言葉にも、新たな感情を抱いた。
数秒フリーズしてから、自分の身にあったことを理解し王子は話した。








「…姫。結婚して下さい」








はぁ!?と会場にいた全員が思っただろう。
しかし、新たな扉を開いた王子には聞こえない。

「良い訳ないでしょ」

姫はそう冷たく言ったはずだが、王子は更に喜んだ。

「いや、結婚して下さい!」
「人の話聞こえてる?」
「はい!」
「バカだろあんた」
「はい!こんな僕ですが末長くお願いいたします!」
「バカは嫌」
「そこを何とか!」
「嫌」



不毛なやり取りは続き、結局そこで舞踏会は終わりとなったがその後も王子は姫をストーキングし続けてついには結婚したそうだ。
永遠に尻にしかれるのは言うまでもなく。













あとがき
あれ!?いつのまにこんな内容に!?
レンくんの変態っぷりは正常活動。

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