短編集

□風邪になったら役得
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「ぶえっくしゅ!」


ずるずるっと鼻水を啜る。
誰か噂してんのかな、とか考えつつそうではないことにレンは気が付いた。

「あー、やべ風邪引いたかも」
「あらら、大丈夫?」
「大丈夫、大丈夫。ちょっと悪寒がして、頭が痛くて、ダルいだけだから」
「それ凄く風邪の症状でしょうが!寝てなさい!」

ぷんすかと怒ってから(←実際に口で言った言葉)リンはレンの腕を掴んで、ベットまで連れていった。

「今日は、安静にしてるの!」

びしっと指を差して(実際に口で言った言葉)リンは言った。
すると、レンは赤い顔で尋ねた。

「したら、俺明日までの宿題終わらせれねーじゃん。どうするの?」
「むむぅ」

リンは首を捻った。

「私がやる!」
「本当か?」
「うん、本当!」
「俺よりも頭が悪いのに出来るのか?」
「出来る…多分」
「ふぅん、じゃあ。俺、腹減ってんだよな」
「なら、私がご飯作る!」
「少ししか食えないからお粥が食べたいんだけどな…リン作れたっけ?」
「うん…多分!」
「へぇ」
「本当だから!作ってくるから安静にしててね!」
「へーい」

走って台所に向かうリンの背中を見ながら、レンはこれは使える…と呟いた。





─3時間後

「出来たよ!」
「おせーよ」

堂々とした顔でリンは帰ってきたが、既に3時間も経過。レンはイライラしていた。

「お粥が何か生きててね。でも、頑張ったんだよ!はい!」
「ナンデ?」
「へ?」

皿をつき出したリンは、レンに何故と言われた意味が分からなかった。

「俺、安静にしてなくちゃダメなんだろ?」
「うん、安静にしてて?」
「だったら、一人で食べれないと思わないか?」
「ん?」
「分からないのか?」
「うん、つまり?」

互いに質問合戦だった。

「分からねーの?あーんして」
「パ、パードゥン?」
「何故に英語。あーんして」
「リピートアフターミー」
「その英語は意味違うからな。もう一度言ってくださいって意味で使ったんだろうけど違うからな」
「…ほう」
「おう」

ガチャ!

「イタッ!?いきなり、スプーン口に突っ込むなよ!」
「え、だって。あーんして欲しいんでしょ?」
「だからって、加減と言うものがあるだろうが…」
「テヘ☆」
「何も可愛くないからな」
「ぶー」
「鳴いても可愛くない。ほら、貸せよ。俺が手本を見せてやるから」
「うんっ」

リンは元気に笑ってスプーンを差し出した。

「こうやって、食べやすい量を入れてゆっくりと口に運ぶんだよ」
「おおっ!なるほどー。あーん…もふもふ」
「どうだ。分かったか?」
「うん!じゃあ、私が食べさせるよ。口あーんして」

リンはゆっくりとお粥を取って、ゆっくりと運んだ。
まあ、少し遅すぎだ。

「あーん」
「今度は…大丈夫?」
「もふもふ。大丈夫」
「ん、良かったー」


そうして。


「ご馳走でしたー」
「美味しかった?」
「ああ」
「んふふ。良かったー。じゃあ、安静にしててね!」

るんるん楽しそうにスキップしながら食器をさげに行くリンの後ろ姿を見て、レンはあることに気が付いた。




「あれ、さっきのって間接キスだよな」



その後、レンが赤い顔で転げ回っていたのをリンは知らない。



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