短編集

□監禁ゲーム
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君は僕だけのモノ」の続き。
見てなくても理解できます、多分。












─僕は姉さんを監禁した。


「姉さん、綺麗だよ。今までも綺麗だったけど、今日は格別綺麗だ」

椅子にくくりつけられてる姉さんを覗き込む。
瞳は憎悪の炎をちらちらと燃やしている。
姉さんらしくないな。
それでも人間らしくて好きだ。

「んー…」
「何言ってるか聞こえないな…あー。口枷のせいか」

姉さんの口を締め付けていた布を取ってやると「ぷはっ!」と、大きく息を吐いた。
そして僕を睨んだ。
姉さんもそんな顔出来るんだ。
ぞくぞくと得体のしれない快感が電流のように体を駆け巡る。
あれ、僕ってSな人間だと思ってたけどMっ気もあるんだ…自分ながら意外だ。

「あんた、高校まで…手を伸ばしてたの」
「決めつける言い方は好きじゃないな。手を伸ばしてたっていう言い方も好きじゃない。だって、姉さんを助けようとしただけなんだから」

すると、姉さんは嫌悪に表情を歪めた。

「私は一度も、助けられたこと…ない…」

絞るように吐き出された言葉は僕の心を深く抉って傷つけた。
もしかしたら、もしかしたら…と考えないでいたことを本人の口から言われて重くのしかかる。

「そ、そう…?」
「この際だから言うけど…一時期は愛していた。歪んだ方向に…でも今は違うの…」
「言うなっ!」
「恋愛感情なんて、少しも…ッ!?」
「言うな言うな言うな言うな言うな言うな言うな言うな言うな言うな言うな言うな言うな!!!」

ただひたすらに姉さんを殴っていた。
拳は徐々に濡れていく。
姉さんの血液と、涙によって。

姉さんが口を開こうとする気力がなくなったのを確認して手を止めた。
そして、我に帰る。

「ね、姉さん…ッ!?誰がこんな酷いことを…僕が助けるからね!大丈夫だから!」

「か、…わいそうな子…」
「姉さん?」
「大丈夫…大丈夫…」

いつものように、僕を包み込む優しい言葉。
僕を受け入れてくれる、愛を示す言葉。

「姉さん、僕を愛しているんだね?僕も愛してるよ!」

僕を憐れむように姉さんは見つめた。
悲しく、優しく。
その瞳が僕を受け止めてくれる気がして、服の上から胸に口をつけた。
誰かに殴られた頬も、血に濡れた鼻にもキスの雨を落として慈しむ。

「姉さん、愛してる」

「姉さん、愛してる」

姉さんがふと微笑んでくれた。
その時、僕の瞳から涙が溢れ落ちた。
意図せず落ちてきた液体を涙と察するのには少しばかり時間がかかった。

「何故泣くの?」
「分からない…分からないよ…」
「不思議ね」
「姉さんも不思議だ。だってこんなにも人間になっているんだから…」
「人間…だよ?」
「そうやって表情を見せる…どうして?」
「…そうね。諦めかしら」
「僕のこと好きじゃないってこと?」

思わず首に手をやる。
力を入れれば…そのまま…

「好きよ。好き…心のそこから…ね」
「本当?」
「勿論よ…」

その瞳は今までと違い真実を物語っていた。
嘘偽りない。
何故か、その瞳に悪寒を感じた。

「貴方を愛してる」




─僕は姉を監禁している…筈なのに…監禁されると感じた。











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