短編集
□先生、遊ぼ?
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「先生、遊ぼ?」
幼稚園の新米先生な俺、レンに話しかけてきたのは彼女が初めてだった。
子供に好かれにくい見た目らしく誰も寄ってこない。
そんな中話しかけてくれたのが彼女、リンちゃん。
無表情で基本一人の子だから驚きだ。
「お、おう!遊ぼう!」
初めてのため挙動不審。
「何して遊ぶか?」
「先生ぇが決めて?」
「俺がか…鬼ごっこはどうだ?」
「人数が」
「そ、そうだったな」
「とりあえず、走るか」
「走るのキラーイ」
なかなか手強い。
子供=走る…じゃなかったのか?
「んむ。じゃお絵描きは?」
「お絵描きスキー!」
丸い目を細くして喜んだ。
何だ。可愛いなぁ。
無表情って誰が言ったんだよ。
「…何描いてるのかな?」
「お馬さんと先生!」
「それ、お馬さんの先生だよね…」
幼稚園児にしては結構上手な絵なのだが、描かれているのは馬の様に這いつくばる俺。
(金色の髪とか様々な部分から俺と似ていることを確認。)
「んーん!お馬さんと先生!」
「…先生は何処にいるのかな?」
「ここ!」
指差した先には…「石?」
「先生!」
むーっ!と怒っているが、これ…普通に石だよ?
はっ!遠回しにお前は石だ。と告げているのか!?
やるなぁ。
「先生だったね」
「でしょ!」
誇らしげに胸を張る。
何この可愛い生き物。
「次は先生が私を描いて?」
「うん、いいよ」
絵心には自信がないが一応描く。
出来上がりを見せた瞬間、リンちゃんは凍った。
返事は聞かずとも分かる。
俺の絵は神がかっているからな。
「人生、良いことあるよ…」
5才児に慰められた。
そんなに酷かったのですか。
心がかつてない程抉れた。
痛い、痛いよ。
胸を押さえているとリンちゃんがまた笑った。
…仕方がない。
その笑顔に免じて許してやろう。
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