短編集

□ヤミカレシ
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「愛してるよ」

彼女に言う。
すると、彼女は僕に笑って返してくれる筈だった。
「仕方ないなぁ」と。
しかし、返さなかった。

酷く怒った顔で。
「その言葉、聞き飽きた」
僕を罵った。

彼女が?有り得ない。
僕の、聞き間違い。だよね、ね?

今回は確かに僕が悪かった。
たまたま彼女とのデートに遅れてしまった。
遅れるのはしょっちゅうだったがリンはいつも許してくれた。
「仕方ないなぁ」
って笑って答えてくれた。
なのに、今日はどうやっても機嫌が治らない。


僕が悪いの?


僕が生きてるから?



「きゃあぁぁっ!?」
女が騒ぐ。

煩いなぁ。
ちょっと、ナイフを取り出しただけなのに。
黙ってよ。

さくっ

腕を切りつけた。


ああ、良かった。
彼女が僕を見ている。

僕を心配しているんだね?


腕がとても痛い。
全身の血液が腕から出てる気分だよ。

ねぇ、僕を見て。




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