短編集
□花
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一輪の綺麗な花。
暗闇にひっそりと咲いていた。
私がその花に目を奪われたのは、きっと彼に似ていたから。
花が彼に似ているなんて可笑しな話だけど、私にはそうとしか見えなかった。
寂しそうに、それでも凛と咲く花が。
彼の様に泣いていた。
それを見て私はその花を掘り出していた。
この子をここに置いていたら死んでしまう。
私がこの子を助けないと。
この子を助けれるのは私しかいないんだ。
何故かそう確信していた。
掘り出した花はとても美しかった。
日光を浴びると更に輝いた。
美しく、儚く。
暗闇では分からなかった色をはっきりと見せる。
私はこの子の黄色い花弁に魅せられた。
気づくとこの子を抱えて持ち帰っていた。
家の前では泥だらけの私を見て彼が怒っている。
そんなに怒らないで。
貴方の綺麗な顔が台無しよ。
それに、良いものを持ってきたの。
「レン。貴方を連れてきたの」
彼に花を見せると薄く笑った。
ありがとうございます、と呟いてから。
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