短編集

□お風呂
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「お風呂入ろうっ」

レンの前で仁王立ち。
そんな私をレンは呆れた顔で見ている。

「突然どうしたの?」

「なんとなく入りたくなったの。ねぇ、
一緒に入ろうっ」

「い、一緒にデスカ!?」

とても驚いたんだね。
声が裏返っている。
そして、白い頬が一瞬で赤くなった。

「入りたくないの?男のくせに情けないなぁ」

にやにやと笑う。
そう、私はこれを言いたかったの。
レンの苦悶に歪む表情を見たかったの。
どうだ。
参ったか。

「…おう!僕も男だ!入ってやるぜ」

「え?」

「何だ?自分で言ったことなのに出来ないのかぁ?リンってそんな人だったんだ」

形勢逆転。
レンかにやにやと笑っている。
私はさっきのレンのように耳まで赤くさせていた。

「いいよ!入るよ!」

「望むところだっ」

半ばヤケクソ状態で一緒にお風呂に入ることになった。







「なぁんで水着着てるのかな?リン」
湯船に浸かりながら体を洗う私を見て言う。

「別に良いでしょ。私毎日水着でお風呂に入ってるの」

「初めて聞いたよ。裸、見たかったのに…まあ、ビキニでも可愛いけどさぁ」

「変態発言止めなさい。体洗い終わったから次いいよ」

「あ、もう僕は洗ったから大丈夫」

「じゃあ、入るね」

「お、おふ」

ちゃぽん

お湯が全身を暖かく包んでくれる。
ふうっとため息をつく。
どうしよう。
この無言が耐えられない。

「なぁ、こっち来いよ」
レンが私の方に手を伸ばす。

「そ、それはレンのお膝に乗れってこと?」

「そゆこと」

「下、何も着けてないんでしょう?」

「まあ…でも何もしないから」

レンの手つきは怪しいけど仕方がないから信じてあげる。
膝の上に座るとお尻に何か当たったのは気にしない方向で。
レンが腰に手を回す。

「くっつき過ぎじゃない?こんなにお風呂広いのに…」

「だって、ここでしかいちゃいちゃ出来ないだろ?出たら、カイ兄やメイ姉もいるから」

「まあ、そうだけど。って何してるのっ…んっ…!」

「綺麗な背中が目の前にあったから、つい」

「何もしないって言ったでしょー…あっ、ちょっとぉ…」

「信じたのか?」

後ろだから見えないけどきっと、素敵な笑顔何だろうな。

「信じた…あっ…たしがバカじゃないの…んっ」

「ヤバイ。リン可愛い」

ちゅ、ちゅと背中に口付け。
腰に回されていた腕は徐々に上がって、胸に達した。

「ちょ、だぁめ…ふっ」

「可愛いから、ねぇ?」



コラー、お前達何してるっ!



「に、兄さん」
「カイト兄さん」

突然風呂場の扉を開けられた先にいたのはカイト兄さん。

「兄弟でこんなことしていいのか、分かって…」

ばしゃ!

レンがカイトに水をかけた。

「硬いことは気にしなーい」

「レン…」
プルプル震える兄さん。
あ、これはヤバイ。

「ちょっと、話しような」




兄さんの笑顔がとても怖かった。



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