短編集

□放課後
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「レン、置いてくよ?」

私は、友達と談笑するレンに言った。
少し怒気を交えて言えば、それを察してかレンはすぐに動く。
友達にごめんって笑ってついてきてくれる。私を優先してくれる。
嬉しいな、……なんてほだされたりしないんだから。

「ねえ、何で怒ってるの?」

「……別に」

ぷいと、そっぽを向く。
そんな悲しそうな目で見ないでよ。罪悪感が生まれちゃうじゃない。
――やっぱり、レンが大好きだって自覚しちゃうじゃない。

「僕が朝寝坊したから?」

「違うわよ」

「僕がリンに向けてくしゃみをしたから?」

「腹立ったけど違う」

「今日、僕がプリンを食べたから?」

「ちょ、食べたの……?」

「えへへ。ごめんなさい。これでもないのかー」

「プリンは許してあげるから。……ちょっと位、乙女心理解しなさいよ」

「何だろう。今日は何をしたかな?あ、そうだ。放送委員会があってミクちゃんと作業してた」

「……それよ」

「え?」

「ミクと楽しそうに話してたじゃん。私がいるのに……私のことなんて放置して、ミクと」

「ぷふっ」

突然笑い出すレンに思わず、きっとキツい視線を向けてしまう。

「何よ……バカだって言いたいの?そうよ、私はバカよ。ミクと話してる、それだけでモヤモヤして変な気持ちになって――」

「変じゃないよ、可愛い」

「なっ!?」

予想していなかった可愛い発言に思わず動揺が顔に表れた。みるみると頬が熱くなっていくのを感じる。

「それって嫉妬でしょ。嬉しいなー。リンが嫉妬してくれるなんて、夢みたい」

「嫉妬なんて、そんな。あれは醜い女がするものだもん」

「そんなことないよ。それだけ僕のこと想っている証拠だから醜くない。とても綺麗だよ」

「嘘よ」

「嘘じゃないよ」

「じゃ、じゃあっ。証拠見せてよ」

不毛な争いに終止符を打つように怒鳴ったら、レンはクスリと笑った。
そして、私の手を取って、絡める。
これは――、

「これが証拠になる?」

恋人繋ぎ。
合わさった掌は熱を持っていて、汗をかいている。
熱いのはどっちなのか、緊張してるのはどっちなのか、近すぎて分からない。
きっと、……私。
ふと目線をレンに向ければ、耳まで赤くして照れている彼と視線が交差した。

「ぷふっ」

「なっ!?なんで笑うのさっ。証拠にならなかったの!?」

思わず笑ってしまった。
ミクのことで悩んでいた私がバカみたい。
こんな優しくてバカ真面目な人を疑うなんて。

「レンも可愛いよ」

私もレンも、バカになっちゃう位お互いを好きなんです。


end

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