短編集

□好きすぎて
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「ねぇ、レン?」

薄い胸を僕に押しつけ彼女は囁く。
幼い膨らみが僕の胸を踊らせる。
しかし、彼女がこれから話す内容には喜ぶことは出来ない。

「ちょっと相談があるんだ」

上目遣いで僕を見る。
そんな目で見られたら聞くしかないだろう。
たとえ、僕が傷つくことになっても。

「分かったよ。今日も?」

「うん!じゃあ今回も宜しくね」

ぽんっと背中を叩いて彼女は消えた。
温もりを僕の背中に残したまま。
彼女が僕に触れる度、触れた場所は熱く火照る。
比例して彼女への想いは高まった。

彼女から頼まれたことを実行に移す。
「カイト兄さん」

「ん、何だ?」

「今日はカードゲームでもしようよ。時間、ある?」

「おう、良いぞ」

にこやかに笑って答える兄さん。
僕は貴方のその笑顔が好きだった。
でも、今は見るのも嫌だ。
あの時からか。

リンが兄さんの事を好きだと僕に打ち明けたあの日から。

それ以来、リンは僕を利用して兄さんに近づくようになった。
でも、リンが僕に笑顔を向けてくれるならそれで良い。
報われなくても良い。
だから、ずっと側にいて。

僕か兄さんとゲームをしていると後ろからリンがやって来た。
昨日と同じように。
「何してんのっ?入れてー」

「良いよ」

「ありがとー」
リンが僕を抱き締めた。
僕が自分の気持ちに嘘をついて彼女の恋を応援すれば彼女は笑ってくれる。
抱き締めてくれる。
淋しい毎日の心の糧だった。

「ははは、やっぱりお前達は中が良いな」

「そうー?」
兄さんと会話が出来て彼女は女の目をする。

「じゃあ、ゲームを続けようか!」
いいムードを壊したくて言った。

「そうしようか」

「そうだねっ」





はぁっ

今日も長い1日が終わった。
作られた笑顔が顔にまだ貼り付いたままだ。
ベットに乗って天井を仰ぐ。

がちゃ

扉の開く音。
立っていたのは、リン。

「どうしたの?」

「聞いてレン…」

真面目そうな表情。
ベットに座って僕を見た。

「私、兄さんに告白しようと思うの」

きーん
耳鳴りが酷く五月蝿い。
何だ、リンは何て言ったんだ?

「ヤッパリ、コノオモイツタエタクテ」

何を?理解できない。
大好きな彼女の顔が歪んで見えない。
僕の目がおかしいのか?

ああ、おかしいんだな。

僕の目の前には首を手で押さえつけられ、苦しむリン。
そんなこと現実にあるはずない。


そう。
リンがカイトに告白?
そんなこともない。

だってリンは

一生僕のもの。







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