高尾作品創作

□バレンタインデー
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久し振りの風茉君のお休みの日。
私と風茉君はソファに座り込んでぼーっと時間を無駄に過ごしていた。

「今日はバレンタインデーだね」
私が言うと風茉君はそわそわと動き始めた。
「おう、そうだな…」
「どうしたの。お腹の調子が悪いのかな?」
すると風茉君はむっと顔をしかめた。
「…どうして咲十子はそうやって母親のようなことしか言えないんだ」
「うふふ。ありがとう」
母親のいない風茉君の代わりのお母さんになれているなら嬉しい。
私のことを認めてくれてるってことだもんね。
「褒めてないが…うむ。可愛い」
もにょもにょと口を動かして何かを呟いた。
「ん?もう一回言ってくれる?」
「そ、その前に咲十子がチョコをくれないと」
風茉君は顔を赤くさせながら、私に手を出した。
それってチョコを催促してるってこと?
だとしても無理だよ。だって…

「用意してないよ」

私が言うと、風茉君は雷を受けたかのように大きく飛び跳ねた。
ソファに寝転がっているはずなのにどうやって飛んだんだろう。
面白いなぁ。
「な、な、な!?俺のことが嫌いになったのか!」
「そんなことないよー」
「じゃあ何で!こないだのバレンタインデーはチョコを作ってくれたじゃないか!」
「そうだね。だから今年は違うのにしたの」
「…ん?さっき用意してないって…」
今度は風茉君は不思議そうな顔をした。

「ん、私がプレゼント…じゃあダメ?」
自分の胸に手を当てて聞いてみた。
いつも疲れている風茉君の言うことを何でも聞くから家政婦のように扱ってほしい。
少しでも風茉君の負担がなくなってほしいから。

「……かはっ」
しばらくの沈黙の後、風茉君は吐血した。
と、吐血!?
「ふ、風茉君に何が…!」
寝ている風茉君を抱き寄せると風茉君はビクンビクンと身体を痙攣させながらも、最高の笑顔を浮かべていた。
ぱくぱくと口を動かして何かを話しているみたいだけど、よく聞き取れない。
ようやく聞き取れた時には風茉君は安らかな笑顔だった。
「…俺にはっ…刺激が…強すぎた…」

その後風茉君はハガネさんに自室に運ばれて事なきことを得たけど、最後にこう言われた。
「風茉様にはまだ過度の興奮を与えないで下さい」と。
そんな興奮をさせるつもりなかったんだけど、風茉君が吐血するならもうあんなことは二度としない。
来年からはちゃんとチョコをプレゼントしようと心に決めた。



2014.2.14
end

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