高尾作品創作

□積極的な咲十子さん
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ぎしっ

ベッドの軋む音。
腹にかかる重さ。
汗の交ざった甘い香り。

くすぐったいモノが顔の周囲を移動して俺は目を開けた。
その先には有り得ない光景が広がっていた。
「咲十子…!?」
咲十子が俺の腹の上に跨がり、鼻先が触れあうくらいの距離に咲十子の顔があった。
寝ぼけ眼が突然のことでしゃっきりと目覚める。
「あー、おはよ。風茉君」
いつも挨拶する時のように柔らかい笑顔を浮かべてから、俺の頬に口をつけた。
柔らかい唇が俺の頬を滑って、正直くすぐったい。
何しているんだと聞きたいところだが、聞いて止められたら何か嫌だ。

「おはよう。咲十子」
さも当然のことのように挨拶したつもりだが、少し声が震えてしまったのは気づかないでほしい。
「ん。今日も可愛い」
ちゅ、ちゅ、ちゅ
キスの雨を頬や耳、首…いろんなところに落としていく。
ちょっと待った。
咲十子が積極的なのは珍しいから嬉しいけど、こんなにも大胆な咲十子は咲十子じゃない。
変だけど、咲十子だから退かすこともできない。
ああっ。でも、咲十子の匂いを嗅いでいると頭が痛くなってくるがそれすらも気持ちいい。
「可愛いなんて男に言うなっ…ふっ…」
せめてもの反抗をしようとしたら耳たぶを口に含まれて予想以上に声が出た。
吐息が髪にかかり心臓が激しく脈打つ。
ちょ、ほんと…そんなに、はむはむするな。
「ふぁー…可愛いから仕方がないのぉー」
「今日は、どうしたんだ。咲十子」
「いつもこーいうこと我慢してたの。でも、反抗してこないから嬉しいのかなーって」
「いや、嬉しくない訳じゃなくもないがなくもなくない?…結局分からない」
「意味分からないよ。風茉君ったらぁ。私に分からない言葉使ったからイタズラしちゃうぞー」
がばっと布団をまくりあげて、俺の隣に寝転がった。
こしょこしょーとか言いながらくすぐっているつもりなのだろうが、全くこちょばゆくない。
これがイタズラなんて可愛いんだ。
「もう!全くきいてなーい。なら、もっとスゴいイタズラしちゃうんだから」
全てされるがままに、咲十子の奇行を見守っていたら今度こそ本当にとんでもないことをしようとしていた。
プチプチとパジャマのボタンを外していたのだ。

「咲十子。一旦落ち着こうか。さすがに嬉しいけど、俺はそこまで望んでないと言うか。…いや、近い将来そうすることはあるかもしれないけどまだそのタイミングではないと思う」
「訳分かんないことは言わないの。くっつけちゃうぞー」
「わ!ちょ!咲十子!」
咲十子がパジャマを脱ぎ、胸元をはだけた状態で俺の右半身に抱きついた。
勿論、俺の右半身は血液循環が激しすぎて軽くヒートしかかってる。

右腕に当たるぽよんと柔らかいモノの正体が分かるから、スゴくドキドキ心臓が壊れそう。
ちょっと待て。本当にこれは変だ。
朝、起きた時からおかしいとは思っていたけど咲十子がこんなことを思っているはずない。
思っててほしいけども。

「咲十子…ちょっと離れようか…当たってるから。それに、俺の精神状態も危ないことなってるから…」
「そんなの知らないもーん。もっと押しつけてほしいの?」
ああ、右を向けない。
視界の端に映る咲十子の笑顔が可愛すぎて直視できない。
もう、いっそのこと目を瞑ってしまえば良いのか…


…あれ?

暗い。

「…ん」

奥で…

「…君」

誰かが俺を

「…ぅま君」

呼んでいるような気が。



「風茉君、おはよう。ぐっすり寝てたよ。きっと昨日は疲れてたんだね」

咲十子がいた。
さっきの淫乱な咲十子じゃなくて、普通に、いつもの咲十子。
「お…はよ…」
胸元もはだけてなく、俺の頬にも咲十子の唇の温もりはない。
まさか。そんなことない。
…と心のなかで否定するがこの状況から考えられる事実はただ一つ。

全て夢




→あとがき
夢オチでしたー。
思春期の男の子ならそんな妄想も仕方がありませんよね。おそらく。

2014.2.12
end

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