高尾作品創作

□年の差なんて
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「ふんふふーん」

鼻歌を奏でながら店内を巡る。
今日は特売デーだからお高いお肉や野菜がいつもよりも安い。
そのことが凄く嬉しくって、何を選ぼうか迷っていた。

「そんなに買って大丈夫ですか?」
私が買い物に行くと言ったら(監視するために)ついてきたハガネさんが聞いた。
私を監視することもハガネさんのお仕事だから、お仕事を増やしてわるいとは思うけど今日は仕方がない。
だって特売デーなんだもの。
これに食い付かない主婦はいないでしょ?

「お付き合いさせて申し訳ないんですけど、今日ぐらい沢山買い物させてくれませんか?」
私の食費が風茉君の家から出ている以上、食費を減らす努力をしなくちゃいけない。
そうしたら風茉君の負担も少なくなると思うし、子供らしくいれるんじゃないかな。
って、言ったら風茉君は怒ると思う。
『俺の心配なんてしなくて良い。咲十子の好きなようにしろ』ってね。
想像出来てしまうから言わないけど。

「仕方がないですね」
私の意図を察したのかハガネさんは微笑んだ。
さすが、大人。
さっきから私のカゴを持ってくれているし、やることなすことスマートで完璧だ。

それに引き換え私なんて…風茉君よりも大人なのにスマートなことなんて出来ないし、子供みたいにヤキモチしちゃう。
むしろ風茉君の方が大人みたいだ。

きっと風茉君はカッコいいから大きくなったらモテるんだろうな。
私よりも綺麗な人が風茉君の前に出てきたりするから、風茉君は惚れちゃうだろう。
そうしたら私みたいな婚約者なんて要らなくなっちゃって捨てられる。
そんなの嫌だ。
そうなるぐらいなら、年の差なんていらないよ。
風茉君と同い年に生まれたかった。

私は大きく溜め息をついた。



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