高尾作品創作
□双子なんて
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私達は双子。
そのせいでいつもひとくくりにされて呼ばれてきた。
けど、私達は全然違う。
私は気が強いけど、弟は気が弱い。
私は女だけど、弟は男。
私は勉強が出来るけど、弟は全く出来ない。
ほら。こんなにも違うのに私達はいつも一つで考えられてきたの。
どちらか片方でいると『相方は?』と聞かれるのはもうウンザリ。
だけど私達をちゃんと区別して呼んでくれる人が現れた。
「晴美さん、僕を何か用ですか?」
と、私を呼ぶ彼、才蔵くんだ。
初めて私の名前を呼んで私を一人の人間として見てくれた。
そんな彼に惹かれてしまうのは当然だった…けど、彼は私の大好きな友人に恋してた。
一度も好きだなんて言っているところは見たことないけど、しの姫が近くに来た時の才蔵くんは明らかに違った。
恋する乙女の顔があるように、恋する男の子顔だったの。
こんな酷いことが現実にあるなんて知らなかった。
初めての恋なのに、好きだって気がついた瞬間に恋の相手が他の人に恋してるなんてあんまりだ。
二人とも大好きな友達だから報われて欲しいという思いと、大好きな才蔵くんと結ばれたいという思いが交差する。
どっちに転んだって誰かが傷つく。
そんな結果は嫌だ。
でも、私が才蔵くんを選んだせいで大好きなしの姫や才蔵くんが傷つくのはもっと嫌だ。
そうなるならいっそ、この想い忘れる。
どうせ若い頃の恋なんて将来まで続かないんだから。
大人になったら私だけを見てくれる人が現れるはずだから。
そう自分に言い聞かせて私はこの想いを忘れる。
「しの姫のことが好きなんでしょ?」
「な、な、何でそんなこと知って!?」
顔を赤くして才蔵くんはバタバタと慌てる。
そんな素振りをずっと知っていたはずなのに、私はなぜ恋してしまったんだろう。
もしかしたら、分かっていてなお好きになったのかも。
「ふふ、秘密」
ずっと才蔵くんを見ていたから分かるのよ。
でも安心して。
もう好きな人としては見ないから。
これからは最高の友人として見ていくから、ね?
なのに何でこんなにも胸が苦しいのよ。
私の一部なんだから、私が決めたことを聞きなさいよ。
もう…だから、嫌なの。
→あとがき
結局、晴美は諦めようとしても才蔵のことが好きなのでした。
2014.2.14
end