高尾作品創作
□しのぶ恋
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僕は忍びだ。
ご主人様について、そのご主人様をお守りするだけの存在。
勿論、ご主人様には特別な感情なんて抱いてはいけない。
それは小さい頃から嫌と言うほど教えられてきた。
だから僕も分かっているつもりだった。
でも、分かっていたのは頭だけで心や体は彼女を見た瞬間に全てを忘れさせた。
柔らかい髪の毛。
優しそうな表情は少し固い。
でも、彼女の全身から守りたくなるようなオーラが出ていた。
そんな彼女に好きになって欲しいと思ってしまった。
僕は忍びで、彼女は姫なのに。
その事実は変わることなんてないから、僕はこの想いをなくさなくちゃいけない。
そんな邪魔な感情は今後の活動に支障をきたすからと知っているからね。
だから、何度も彼女を傷つけ裏切った。
彼女が本気で僕のことを嫌いになってくれれば僕も、彼女のことを嫌いになると思ったから。
でもいつでも僕のことを信じてくれた。
心底憎んで恨んで欲しかったのに彼女はそんなことをしてくれなかった。
僕はますます彼女を好きになった。
報われることなんてないと分かっている恋なんてしたくないのに。
彼女は僕の心を捕らえて離さない。
それは運命のように酷く残酷で美しい。
だから僕は虜になったのかな?
どんなに僕が愛しても、裏切っても彼女と僕の関係は侍従関係から変わらないのに、それでも願う。
しのぶ様が僕を愛してくれますように。
もう願ったって叶いはしないけど、それでも、彼女のことが好きだから。
ああ、僕って。
なんて最低な人間なんだろう。
2014.2.9
end