お題小説

□好きなら嫉妬するに決まってる
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片思いメイコ→無自覚カイト×幼女ミク



「にーちゃ!」

小さな人差し指を僕に向けてミクが笑った。その姿を微笑ましく見守る。

「そうだよー。カイトお兄ちゃんだよー」
「にっちゃ、にっちゃ」
褒められて機嫌を良くしたのか、ミクは腕をブンブンと振って歌い始めた。
「うーん。良いんだけど、にっちゃを続けて言うと汚いイメージになるんだけど、うん可愛い」
よしよしーっと、撫でようとしたところを─ガシッと細い腕に掴まれた。けれど僕よりも小さいその手の力は強くて。

「こら、バカイト。幼女を連れ込んで何してんのよ」
「痛い痛いっ…!?て、めーちゃん!」
後ろを振り向くとめーちゃんが腕を掴んで眉間にシワを寄せていた。
その深く刻まれたシワはめーちゃんの怒りを表していた。
「勘違いしてるんじゃないかな?この子は預かっている友達の妹だから」
「あー」
大きく頷くとめーちゃんはやっと僕から手を離してくれた。離した場所はうっすら赤くなっている。めーちゃんは一体どんな力で握ったんだ?
「てっきりあんたの事だから、可愛い幼女にハアハアぺろぺろしようと思っているのかと考えてたわ」
めーちゃんの口からそんな言葉が出るなんて。むしろそっちに対してハアハアぺろぺろだよ。とは、言わずに。
普通に普通の言葉を返す。
「僕は真っ当な人間だからそんなことしないよー」
「その言葉自分の格好を見てから言いなさい。貴方が真っ当な人間ならこの世の中聖人君子ばかりよ」
「そんなー…」

改めて自分の格好を見ると。暑いから上半身裸。下は短パン。けれど、僕の長所でもあるマフラーはしっかりと首元に巻いている。
「どこがおかしいの?」
「自分の姿を確認しても尚、変に見えないとか…良い眼科を勧めるわ」
「僕の目は異常かって位に正常だよ「にっちゃ、ミクちゃんヒマー」…そっかー。じゃあ、お兄ちゃんと遊ぼうか」
話を見守っていたミクは突如、僕に手を伸ばしてすがった。
脇に手を入れて抱き上げると軽く小さいミクはいとも簡単に僕の胸の中に収まる。
「にっちゃのからだ、あったかーい」
ミクはすりすりと僕に頬を擦り寄せて、柔らかく目元を緩ませる。ああ、リンとレンの時はこんなことなかったから何か、新鮮だ。
「じゃ、にっちゃと一緒にお部屋でお遊びしようかー…って、いったぁっ!!?」

ミクを抱いてがら空きになっている横腹を、ガシイッ!!と、躊躇なく掴まれた。
掴んだ相手は、めーちゃん。怒りの表情でも悲しみでもない、不満げな表情で掴んでいた。

「ど、どうしたの…?めーちゃん、痛いよ」
両手はミクのために使っているから、めーちゃんの攻撃を防げずにただ痛みに耐えている。
しかし、ミクは僕の状況を知らずに「いかないの?」と可愛らしく拗ねている。いや、僕も連れていきたいのは山々なんだけど。
「…何でよ」
「へ?」
「何で私を置いてくのよ」
思わず、キョトンと目を丸くさせた。めーちゃんの言葉の意味が分からなくて。
「だって、そりゃ、五月蝿くしてめーちゃんを困らせるのは嫌だし。それに、仕事から帰ってきたばかりじゃんか」
「そう、だけど…その、ねえ…」
めーちゃんにしては珍しくモゴモゴと語尾を弱くする。
「ん?」
僕が聞こえなかったから聞き返すと、めーちゃんは赤くなった顔を僕に見せ、耳をつんざくような大きな声で言った。

「察しなさいよ!この、鈍感マフラー!」



‐‐‐‐


私ったら、なんてことを言ってしまったんだろう。カイトが鈍感、なんてイヤって程分かってることなのに。

ああ、でも仕方がないわよ。
だってカイトが私以外の女性を部屋に連れ込もうとするんだから。あの子の年齢なんて関係ない。連れ込むことが問題なの。

もう、イヤだわ。相手が小さい子でカイトが好きになる可能性なんて少ないのに、こんな黒い気持ちになるなんて。
でも、こうなるべきなのかしら?

好きなら嫉妬するに決まっているもの、ね。


‐‐‐‐



めーちゃんが軽いヤンデレっぽくなってしまった。でも、めーちゃんはヤンデレを表面上に出さないから一見ツンデレ。
ヤンデレをツンデレで包むという最高の技、めーちゃん、流石です。

あと、読み返して気がついたこと。鏡音の方がミクちゃんよりも年上設定になっている!


2014.6.20

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