幻想水滸伝

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君に会えてうれしかった_

けれど、居なくなるととっても不安になるよ


君との私の証≠傍に置いても

今は満たされない...


「...君と私は離れちゃいけないのに」












ラダト_サウスウィンドゥ市とミューズ市の間にある街で、街の西端にはトラン共和国へと通じるデュナン川が流れている

サウスウィンドゥ市から逃げ伸びたであろう人々の姿もちらほらと目に入るが、リオウ達の姿はまだ見つかっていない


「...」


そうか、リオウ達は昨日ノースウィンドゥを出発したのだから到着している筈がないか...

後二日はかかるだろう...
ハルモニアに戻り考え事ばかりしていたせいか、無駄なミスが目立つな...

自分に呆れた、とため息を吐き、取り敢えず宿屋へ行き今夜の宿を確保した後、ラダトの街を見て回ることにした

紋章屋を探してみたがどうやらこの街にはないようだ


ヒクサクの部屋から勝手に大地の紋章を持って来たのだが自分で宿すしかないか_

番人の紋章は武器に変化するが中々体力がいるし、夢魔の紋章は出来れば使いたくはない、それに、流水の紋章よりも大地の紋章の方が何かと使えるだろう_

番人の紋章と夢魔の紋章は取り外しは出来ないし...


ミアはデュナン川にかかる橋まで行き、手摺に寄りかかると川を見下ろした


水鏡の自分の姿は何百年と変わらぬ姿を映し出す


そう言えば、アップルの言っていたシュウという男は一流の軍師だと聞いたが...

一流の軍師と言えば、やはり名門シルバーバーグ家の人間なのだろうか

ヒクサクに聞いた限りの戦争で、彼らの血を引く者たちが軍師として活躍してきたのは聞いていたが

その中でも印象に残った人物は、オデッサ・シルバーバーグ...

彼女はシルバーバーグ家に生まれたが軍師として活躍することはなく、赤月帝国、今のトラン共和国での戦争、解放軍のリーダーを務めた女性...

彼女の死により、解放軍のリーダーはティル・マクドールへと変わったそうだが...

『結婚式で血まみれになりながら赤月の兵士達を剣でなぎ殺したんだってさ
でも、次の日に処刑されるような男となぜ彼女は結婚しようなんて考えたんだろうね
結局純白のドレスを真っ赤に変えた彼女は助かり逃げて解放軍を率いた
男は死んじゃったみたいだけれど...
今は彼女も死んで、天国で結婚式のやり直しでもしてるんじゃないかな_』

ヒクサクの笑い交じりの言葉が頭の中で再生された、気分の悪くなるような話だったが

男の敵をとろうと立ち上がった彼女は勇敢だ_



彼女には弟と...兄がいた筈

確か兄の方は解放軍の軍師、マッシュ・シルバーバーグ...解放軍を勝利へと導いた軍師_


確かハルモニアにも居たな...シルバーバーグ家の血筋が一人...

名前は忘れたが、赤毛の男だったのは覚えている_


ミアは顔をあげ、まだ明るい空を見上げた

血筋は争えない...か。


視線を街の方へと変えると、商人らしき男が数名、その先頭に見事な長い黒髪の男が居て、自然と目が合った

目つきは鋭く、いかにも賢そうな顔つきだが、綺麗な顔立ちのその男から何故だか目が離せない

あちらも足を止め、視線を離そうとはしなかった_


すると男は、何かわかったかのように、ほぉ_と口を開く


「ハルモニアの女神と謳われた人が逃亡、いや、迷子ですか?」

知っている者は知っているのだろう、額の紋章と手の紋章を見て、ハルモニアの巫女だの神だのと祭られている存在を

「いいえ...人を待っているだけです」

否定も肯定もしない、ただその小ばかにしたような物言いに少々苛立ち片眉をピクリと痙攣させ不愛想に答えてやった

「...失礼、この街で交易商をしているシュウと申します、名を伺っても...?」

シュウ...ならこの男がアップルの話していた一流の軍師...


シュウはミアの傍まで近づくと軽く頭を下げた、笑みでも浮かべればまだ可愛らしのだが、整った顔は無表情のまま

「ミアと申します、今日は待ち人は来ないみたいなので、失礼しますね_」

心を見透かすような...あの目は苦手だ_

ミアはシュウの横を通り過ぎラダトの街へと歩みを進めた





彼女の後姿を見送り、シュウは珍しいものを見た_と、また歩みを進めた



ハルモニアの女神_
数百数千とこの世を生き、この世のすべてを知っているとも言われている

紋章の歴史は彼女の手の内に秘められているだの、紋章を作り出したのは彼女だとか_

しかし、彼女はハルモニアに囚われた...




全て噂でしか聞いたことしかないが_

まさかあんな少女が噂の女神だったとは



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数日後、宿屋の一階で昼食をとっている時だった
入り口から聞き覚えのある声が聞こえ目を向けると、疲れ顔を浮かべアップルに食事をとりたいと訴えているナナミが居た


「もーお腹ペコペコだよぉ;ねーシュウって人に会う前にここでご飯食べて行こうよぉ」

「いいえ、今夜の部屋を確保したらすぐにシュウ兄さんの元へ行きます」

アップルの言葉に肩を落とすナナミ、リオウは苦笑いを浮かべナナミの肩を叩いている


「ナナミさんとリオウさんはここでお休みください、後は私とアップルさんで、シユウさんの元へ行きましょう?」

「ミアちゃん!?なんでなんで?どーして?」

「ノースウィンドゥに残っていた筈じゃ?」

席を立ち、リオウ達に突然声をかけてナナミもリオウも随分驚いた表情と声で駆け寄ってきた

「えぇ、お城に居てもする事もないので...アップルさん、かまいませんか?」

「あっ、はい、では早速行きましょう」

ミアとアップルはナナミ達を宿屋において、シュウの家へと向かった

「一流の軍師と聞いたので、シルバーバーグの血筋の方かと思いましたが、違うのですね」

「はい、シュウ兄さんは、私と同じマッシュ先生の弟子です...シュウ兄さんは破門されたんですが...軍師としての指示や戦法は兄さんの右に出る者は居ないでしょう」

「...そうですか、ならば必ず軍師になっていただかなくてはいけませんね_」


大きな屋敷の前で立ち止まり、使用人に事情を話し室内へと案内された

客室へ通され、席に座っていると、シュウが眉間にしわを寄せ、いかにも迷惑そうな顔つきで現れた

「またお会いしましたね」






「...要件は大体わかっている、悪いが俺は軍師として勤める気はない」

「っ;兄さん!お願いです!シュウ兄さんの力が必要なんです!」

アップルが頭を下げる中、シュウは視線をミアから離そうとしない

なるほど...

確かに頭は良いようだ


「心配なさらずとも、夢魔の紋章は使いません...紋章の力で人の心を操るのは好きではありませんので」

「...それを聞いて安心した、が、貴方のような方が付いていながら、俺のような軍師が必要とは思えません、寧ろ、その力があればハイランドのルルノイエ丸ごと消し去るなど容易い事でしょう?」

「いいえ、私がハイランドを手にかけた所で、何もおわりはしません_それに...私が紋章の力を使えばハルモニアも黙ってはいないでしょう、そうなれば...ジョウストンはハルモニアとも剣を交えなければならなくなります______」


輝く盾の紋章と黒き刃の紋章、それを宿した者に架せられる呪い_

それは、お互い戦い続ける事____

戦場であらゆる人を巻き込み、悲しみに落とし、紋章の力を使えば使うほどにその命は削られてゆく_


「...それを聞いても、俺には関係のないことだ、帰ってくれ_」








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