幻想水滸伝
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大きな建物の門の前には強面な兵士が2名
ミアは曲がっていた背筋を少し伸ばすと歩みを進める、兵士達もそれに気が付き門を潜らせまいと槍を門の前で交差させた
「何者だ」
ミアはピタリと足を止め、兵士の顔を交互に見ると声にならない程のため息を吐き口を開いた
「私はミアと申します、旅をしている者です、先程トトの村へと足を運んだのですが何者かに襲撃された後のようで、宿がなく困っております...どうか1晩だけでも泊めて下さいませんか?」
嘘はない、本当に、もうヘトヘトなのだ...
「嬢ちゃん、残念ながら部屋がねぇ...でも、牢屋で良いなら空いてるぜ?鍵はかけねぇから心配すんな」
ガハハハハ!と豪快に笑いながら門の内側から現れた男に兵士2人は槍を元へ戻し敬意を払った
どうやら上司のようだ...
「牢屋...ですか?」
それでも構わない、野宿よりはマシだと思えた
男は名をビクトールと名乗りミアを今夜の宿となる牢屋へと案内した
「ハルモニアから来たのか?」
「ぁ...はい、やはり髪色でわかりますか?」
リュックを牢屋のベッドへと置きながらビクトールの質問に答え、振り向いて目を大きくし静止した。
ビクトールの瞳には喜びの色が浮かんでいて、心を開いてしまいそうな程の笑みが貼り付けられていたから...
「ハルモニアに真の紋章を2つ宿す巫女が居ると噂では聞いていたが、本当だったんだな」
「......」
それを知っていて...何故受け入れたんだこの男...
危険だと思わないのだろうか...?
僅かに額に眉を寄せ混乱するミアに、ビクトールはまだ笑顔を作ったまま自信ありげにこういう...
「理由は知らんが、俺は人を見る目だけはあるんだ!お前はいい奴に決まってる!」
俺の目に狂いはない!
そう言って彼はまた豪快に笑った
「...怖くはないのですか?真の紋章を2つも宿す人間はバケモノだとか...」
「...バケモノなのか?」
ミアの言葉にビクトールは、はて?とマジマジと頭の先から爪先まで視線を送り、堪えるように笑った
「クックック...お嬢ちゃんがバケモノならウジャウジャいるモンスターは何になるんだ?ミアは...俺と同じ人間にしか見えねぇが...?」
「...」
バケモノと言われたことは無い、だが...
同じ...その言葉が嬉しくもあり恥ずかしくも思えた...
「...そうやって笑ってる方がいいぜ」
表情が緩んでいたようでビクトールにそう言われ強張らせてみたが、彼の笑顔につられてやはりはにかんでしまった...
「あのっ...お願いがあるんです!」
「んぁ?なんだ?聞ける頼みなら聞いてやるが」
「...暫くここで置いて下さることは可能ですか?っ...何でもします、雑用でも何でも...」
今日泊まらせてもらっても明日からどうすればいいのか分からない、紛争の続くこのジョウストンで旅を続けるのは難しい事だろう...
それに...追手にいつ捕まるかもわからない...
連れ戻されればもう自由はないだろう...
いずれは戻らなければならないだが今は...
帰りたくない____
ヒクサクはきっと怒っているだろうなぁ...
「んじゃぁ取り敢えず、捕虜としておいてやるよ、捕虜つっても自由に砦の中散歩してもいいし、頼みごとや遣いには出てもらうが...あ、でも外に出るときは一声かけろよ?危ねぇからな!」
「捕虜...?っ...よろしくお願いします!」