幻想水滸伝

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「...」


ビクトール達がそのダレルの娘、現市長アナベルへ会いに行っている間、ミアは石畳の並ぶ街の中腹にある階段へと腰を下ろし

彼女を思った_

ダレル亡き後に、その事実を知った娘のアナベルはそれを公表しゲンカクへの汚名を返上した_

父親の罪を娘が謝罪するとは...彼女はとても強い人間なのだろう_

_____________________________


「ミア、お前も来い、アナベルが会いたいそうだ」

市庁舎の門からビクトールが大声でそう言って手を振る姿が見える

重い腰を上げてそちらへ行くと二階の市長室へと連れられた

「この少女が...ハルモニアの女神と称された...?」

「ジェス...私の部下が失礼をしました、私はここの市長を務めるアナベル_ハルモニアの巫女に会えて光栄です」

ジェスと呼ばれた男は小さく誤ったが、ミアを見る目は、まさか_とまだ疑っている様子だった

それもそうだろう、こんな16〜7歳に見える少女が何百年と生きて、ハルモニアの守護神や女神、巫女と呼ばれる人物だとは思えないのであろう...

アナベルは堂々としており、ミアをハルモニアの重要人物だと知ってなお、敬意を表した

「ミアと申します」

そう言ってミアはアナベルの差し出した手を握り返した_

「話はビクトールから聞きました、大変だったようですね」

話しとはヒクサクの事だろう...

「えぇ...しかし、今の都市同盟の方々もご苦労なされているようで...この戦い、ハイランドへハルモニアが手を貸すこともあるかもしれません...その時は私の力を存分にお使い下さい_______」

「それは心強い...」

ミアの言葉にアナベルは満足げに笑みを浮かべた

ハルモニアからはササライか...それともヒクサク本人か...いや、ヒクサクは見物を楽しむだけだろう____

もしくは参戦はせずに終わるか...

ミアはビクトールやフリックが今後の話をアナベルと話すのを聞きながら、ササライの事を思い出していた

___________________


真の紋章を産まれながらにその身に宿し

ヒクサクと瓜二つのその顔_

不老ではあるが成長の段階では育つその身体、子供の頃より礼儀作法を叩きこまれたのだろう、言葉遣いや歩く姿でさえも育ちの良さが伝わる...


見た目が私と同じ頃の歳になり、初めて対面したあの日


私を見て彼は笑みを浮かべたが、私は...

「...それ以上近づかないで」

彼を拒絶した___


怖かった、受け入れたくなかった、ヒクサクと同じ顔だが髪型や素振りは違う物で


不気味に思えた...


ヒクサクの仮面の下はきっと笑みが張り付けられていただろう...

「ササライと申します、本日よりミア様の付き人として身の周りの事をさせて頂きます...」

ササライはその拒絶に戸惑いながらも与えられた役割を説明する_

「身の周り...?そんなもの頼んでないわ、ヒクサク...どーゆうつもり?」

「君が淋しくならない様に...彼についていてもらおうと思ってね...気にいらなかったかい?」



____なら...処分しようか...?____




真の紋章を共鳴させ、頭の中にヒクサクの声が流れ込む...

ミアはフーと静かに息を吐き、視線を床へと落とした

「...ササライ_髪を結ってちょうだい...」

「っ・あ、はい_」

ササライは少々遠慮がちにミアの髪をクシでとく_

ヒクサクはそんな二人を見ると一礼し、その場を後にした____


「あなたは...神官ではないの?」

背後でミアの髪を触るササライに話しかけながらヒクサクの背中を見送る

「神官将として仕えております」

「神官将?なら私の相手なんてしている暇なんかないでしょう...?」

「忙しいと言えばそうなのですが...僕は嬉しいです_ハルモニアの守護神と呼ばれるアナタの傍にいれる事が...」

「守護神...?そう...」

何百年と外界に出ていない間にそんな大層なモノに仕立て上げられているのか

「真の紋章を2つも宿しているなんて...あなた以外にはおりません」

ササライは自身がヒクサクのクローンだと言う事を知らないのだろう_

そうでなければこんなにも穏やかに居られるはずはない...


「ササライ...あなたは今幸せ?」

「はい、とっても________」


彼の純粋な笑みをみて、心が酷く痛んだ_


彼の身体から感じる真なる五行の紋章の一つである真の土の紋章の気配____


自身のクローンを紋章の器として使うなんて____


狂ってる_______________









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