短編小説
□交錯。
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『僕だけを愛して。』×『消えない闇.(長編)』
「なぁ颯太、どう思うよ?」
「どうって、何がよ」
1月某日。
まだまだ寒さの厳しい中、東雲颯太と伊川孝輔は、居酒屋で酒を酌み交わしていた。
「だから!恋人って携帯勝手に覗いたり部屋を物色したりするもんなのかなぁ……?」
「……さぁ、知らねえな」
「なんだよ冷たいな!もっと真剣に考えてくれよ、俺達もう20年以上の付き合いだろ!?」
「んなこと言われたってお前と俺じゃ環境がちげぇんだし俺には分かんねえよ」
「お前の恋人、確か14だっけ?マジでそれ犯罪だぞ今すぐ別れろよ」
「お前んとこのも19だろ大して変わんねぇよそっちこそ別れろ!」
孝輔と颯太は幼馴染で、互いの都合がいい日を見つけてはよくこうして飲みに来ていた。
「でもさ、いくらなんでもお前のパートナーは束縛激しすぎじゃねえか?そういうのヤンデレっていうんだろ」
「ヤンデレ?何だそれ」
「俺も詳しくは知らねえけど『病む』と『デレ』の意味で、誰かを愛するあまり独占欲が強かったり束縛が激しかったりする奴のこと、みたいな」
「病む?……いや、大地は病んでる訳ではないと思うんだが……」
「いやそいつは確実に病んでると思うぞ。普通の恋人はナイフ常備して切りつけてこないから」
「うーん…………」
がくんと項垂れる孝輔を見て、大きな溜め息を零す。
「分かった。俺に出来ることくらいならしてやるよ」
「本当か!?」
「あぁ、幼馴染が会う度に切り傷増やしてくんのもいい気しねえし」
「ありがとう!やっぱお前はいいやつだな!」
「とりあえずそいつと1度話させてくれ。今度いつ空いてる?」
「次の休みは日曜だ」
「オッケー、じゃあそいつ連れてきてくれな」
「あぁ」
次の約束を取りつけて、その日はそこでお開きということになった。