短編小説
□愛情確認。
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『君と僕。』×『アイスと愛す。』
「という訳で、今から俺がお前の彼氏だ。よろしくな」
「あー……ハイ」
「君が僕の彼女?可愛い顔してるね。よろしく」
「へへっ、ありがと!よろしくね!」
―――AM10:09。
宮間光太、神崎龍聖、林良平、荒巻優斗の四人は、休日の朝早くからファミレスでのんびりとした時間を過ごしていた。
なんでも荒巻と宮間が同じバイト先の先輩と後輩だそうで、今日は二人のある提案で集まったらしいのだが。
「……なあ宮間、俺イヤなんだけど。何だよ、いきなり恋人交換って」
「え?だって、最近僕たちマンネリ化してるだろう?そこで同じく同性の恋人をお持ちの荒巻さんに相談したところ、『一度恋人と離れて生活してみて、お互いの大切さに気づいてみたらどうか』との意見を頂いてね。先輩のご好意で、この2組で相手を交換して一日過ごすっていう貴重な体験をさせて頂けることになったんだ」
「貴重な体験って……相手の恋人まで巻き込むなよ」
「え?俺は全然いいよ!だって面白そうだし!!ね、優斗!」
「まぁ、滅多に相談なんかしてこない宮間に言われたらなぁ……」
「お手数おかけします、荒巻さん」
完全に乗り気の3人に対し、イマイチ納得できない神崎。
そんな神崎の様子を見た宮間は、彼の耳元に口を近づけ、
「安心して。君以外を抱く気はないから」
と囁いた。
「なっ…!そ、そういうことじゃなくてだな!!」
「じゃあ荒巻さん、龍聖をよろしくお願いします」
「あぁ、こちらこそ良平を頼んだ」
「人の話を聞け!!」
―――こうして、見た目も性格もバラバラな4人の、長い一日が始まったのである。
「じゃあ良平は宮間と、俺はそこの、えっと……」
「神崎」
「あぁそう、神崎くん…と組むことにして、寝泊りはどうする?」
「荒巻さんたち同棲してるんでしょう?僕は一人暮らしなので林さんはうちに泊まってください。荒巻さん、龍聖を……」
「分かってる。神崎くん、君は俺たちん家においで」
「……ざす」
「よぉ〜し、じゃあそゆことで!各自解散!よい一日を〜〜♪」
「良平、宮間に迷惑かけんじゃねえぞ」
「分かってるって!!ささ!光太行こ行こ!俺ねぇ〜アイスが食べたい!!」
「アイスなら今食べたばかりでしょう」
「違うんだよ!そこのジェラート屋さんのラムネアイスがすっげえ美味くて〜〜………」
良平が宮間の腕に絡みつき、そのままの足取りで二人は店を出て行ってしまった。
「……」
「………」
「……行っちまったな」
「……そっスね」
「ん?なんだ、機嫌悪いのか?」
「………別に」
―――んだよ。
良平っていうの?
いきなり宮間のこと光太呼びだし、馴れ馴れしく腕なんか組んじゃって。
それに宮間だって、あんなにあっさり俺を手放さなくても……
「……ヤキモチ焼いてるのか」
「はぁッ!?!?べ、別に!?だっ誰が!?い、いきなり訳分かんねえこと言うなくださいっス!!!!!」
「動揺しすぎて日本語下手になってんぞ」
「ッ……!!」
核心を突かれた神崎が、顔を真っ赤にする。
「プッ……アハハハッ!!」
「な、なんスか急に……」
「あ、いや、悪い……なんつーか、怖そうなヤツだと思ってたけど、話してみたら案外そうでもねぇのな」
「…そんなの、そっちが勝手に決めつけてただけじゃないスか」
「まぁ、そう不貞腐れるなって。あ、龍聖って呼んでいいか?俺のことも優斗って呼んでくれて構わないから」
「…分かりました」
「あとその敬語もやめだ。そもそもお前敬語得意じゃないだろ?」
「ウッ……わ、分かった」
「うし、じゃあ俺たちもそろそろ出るか」
「おう」
この後2人は会計を済ませ(宮間と良平が食い逃げしていったのでその分も支払った)、やわらかな日差しの降り注ぐ街中へと繰り出したのである。