短編小説

□君に捧ぐ。
1ページ/3ページ

『あ、もしもし、今から家来いよ』

「…えぇ!?」

『さっきライブ終わってさー、疲れてんだよだから来い』

「いやいやいや理由になってないですよ!!疲れてるのなら身体休ませて…」

『うっるせーなーいいから今すぐ来いっつの!!』


ブチッ、ツー、ツー…


「切られた…」



日曜日の夜8時。


最近仕事が忙しく久々の休日を満喫していた僕に、あの人からの電話。


「もうちょっとで企画書完成しそうなのに…!!」


机に散らばった書類を片付けて、出掛ける準備をする。


僕のアパートから戒斗さんの家まで大体20分。


まさかこんな近所にあの『Kaito.』さんが住んでたなんて思わなかったけど。



「最近戒斗さん俺様度が増した気がするなぁ…」


自転車を漕ぎながら、溜め息を吐く。

あの日から、僕らは恋人関係になった。

しかし、それからというもの戒斗さんが物凄く図々しい。

いや、元からそういう性格なのかもしれないけど、それまで僕が抱いてたイメージとあまりにかけ離れてたから……


「まぁでも、なんだかんだで優しい人なんだよなぁ…」


そして僕自身も、なんだかんだで彼のことが好きなんだ。


しみじみと幸せを噛みしめ、自転車を漕ぐ足に力を入れた。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ