短編小説
□君に捧ぐ。
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『あ、もしもし、今から家来いよ』
「…えぇ!?」
『さっきライブ終わってさー、疲れてんだよだから来い』
「いやいやいや理由になってないですよ!!疲れてるのなら身体休ませて…」
『うっるせーなーいいから今すぐ来いっつの!!』
ブチッ、ツー、ツー…
「切られた…」
日曜日の夜8時。
最近仕事が忙しく久々の休日を満喫していた僕に、あの人からの電話。
「もうちょっとで企画書完成しそうなのに…!!」
机に散らばった書類を片付けて、出掛ける準備をする。
僕のアパートから戒斗さんの家まで大体20分。
まさかこんな近所にあの『Kaito.』さんが住んでたなんて思わなかったけど。
「最近戒斗さん俺様度が増した気がするなぁ…」
自転車を漕ぎながら、溜め息を吐く。
あの日から、僕らは恋人関係になった。
しかし、それからというもの戒斗さんが物凄く図々しい。
いや、元からそういう性格なのかもしれないけど、それまで僕が抱いてたイメージとあまりにかけ離れてたから……
「まぁでも、なんだかんだで優しい人なんだよなぁ…」
そして僕自身も、なんだかんだで彼のことが好きなんだ。
しみじみと幸せを噛みしめ、自転車を漕ぐ足に力を入れた。