短編小説
□「アイス」と「愛す」。
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とある夏の日。
連日最高気温が更新される、そんな猛暑の中。
一人の青年が、コンビニのビニール袋を提げ、玄関のドアを開ける。
「良平ー、アイス買ってきたぞー」
「あっ、おかえりー!」
部屋の奥に声をかけると、リビングの方から良平がタタタっと駆け寄ってきた。
「ったく……毎日毎日アイスばっか食って、太っても知らねーぞ」
「んなの、運動すりゃ大丈夫だってー」
青年からビニール袋を受け取り、袋の奥から箱入りのアイスキャンディーを引っ張り出す。
「ほら、優斗も一緒に食べよ!」
アイスキャンディーを2本手に取り、青年、もとい優斗の腕を取って扇風機の前に座り込んだ。
「おい……扇風機と冷房どっちかにしろよ、電気代バカになんないだろ」
扇風機と冷房がダブルで効きキンキンに冷えた部屋に、汗をかいていた優斗は少し肌寒さを感じブルっと身震いした。
「んー、もうちょっとしたら消すからー」
扇風機にあたり、アイスキャンディーを齧りながら「やっぱ夏はこれだわー」と幸せそうに独りごちる。
「はぁ……ったく」
そんな良平の姿に深いため息をつきながら、アイスキャンディーの包身を破り、口に運んだ。
「……」
その様子を、良平がじぃっと見つめる。
「……」
「………」
「………な、なんだよ」
熱い視線に耐えられなくなった優斗が、良平の顔を見返す。
「いや……やっぱ優斗エロいなぁって」
「はぁ!?」
「舐め方とかもそうなんだけど、やっぱ唇?唇がエロい……分厚くて超えっち♡」
「な、何言ってんだ急に……!人を変な目で見んな」
「俺はいつも変な目で見てるよー?優斗ってさぁ、漢っぽいのにどっかセクシーでさ、フェロモンっていうのかなぁ……すごくドキドキする」
Tシャツの上からでも分かる、パンパンに盛り上がった筋肉。それをゆっくりなぞると、ビクン、と微かに優斗の身体が跳ねた。
「ねえ、優斗……しよ?」
トロン、とした瞳で優斗を見上げる。
「……ッ…」
クラクラと目眩がするのは、暑さのせいか、はたまた良平の艶に当てられたか。
「……誘ったのは、そっちだからな」
そう低く囁き、目の前で頬を染める恋人の唇に、噛み付いた。