短編小説

□君の唄。
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「それではもうすぐ時間ですので始めましょうか」

「分かりました」

「えー、では皆さん大変お待たせしました!只今よりkaito.握手会を始めます!」

『キャァァァァァア!!!』


スタッフの言葉を合図に、ファンの女の子達が一斉に黄色いをあげた。


俺は『kaito.』という名前で歌い手をやっている。

本名は氏神戒斗(うじがみ かいと)。

そこから、『kaito.』。


元々歌うのが好きで、趣味程度に始めた歌い手だが、思った以上に動画が伸び、ライブに呼ばれる回数も増え、雑誌掲載を飾り、遂にはソロCDまで出してしまった。

そしてこの握手会は、その発売記念という訳だ。


「ずっと好きだったんです!これからも応援させて下さい!」

「ありがとう、嬉しいよ」

「あぁぁ生で見るとヤバイ、マジでカッコイイ!頑張って下さい!」

「そんなこと無いよ、ありがとう」


1人1人からかけられる言葉にきちんと返して、握手をする。

泣き出す子や、握手後に「一生手洗わない!」と興奮する子など様々なリアクション。


「ぼ、僕、kaito.さんのこと大好きです!頑張って下さい……っ!」


周りのファンより身長が低く幼い顔、中学生くらいだろうか、男の子が遠慮がちに手を伸ばしてきた。

正直俺はあまり男ウケ良くないからこういうのは嬉しい。


「そう言って貰えて嬉しいな、ありがとう」


ニコッと笑って手を握ると、彼の顔が真っ赤に染まる。


「あ、あああありがとうございますっ!」


早口でそう言って、去って行った。


そんなこんなで握手会が終わったのは1時間半後。


電話がかかって来て、俺は夜に歌い手仲間と飲みに行く約束をした。
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