本箱2

□第二章
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牡羊座の聖衣を纏ったムウが、教皇の間へ続く石段を上っていく。
空は青く、風は心地好い。太陽の光を浴びた聖衣は金色に輝いている。

陽射しのうららかさとは反対に、ムウの心には不安感と緊張感がわだかまっていた。

これから教皇の間で、実質的に冥界の女主人であるパンドラと教皇との会見が行われる。公式な会見で、黄金聖闘士も列席するようにとのことだった。先方は三巨頭を連れてくるとのことだ。

聖戦後、聖域は冥界と協定を結んだ。今はその協定の下、互いの領分を侵すことなく平穏に過ごしている。
カノンに到ってはラダマンティスと意気投合したらしく、友人となった。

しかし、そうは言っても冥闘士達は神話の時代から戦ってきた相手である。ムウを始め大多数の聖闘士は、冥闘士個人と友人付き合いが出来るなどと思っていないし、そもそも個人として興味を持たないだろう。

ムウの不安感はその色を濃くしていった。

最近になって、各地で奇妙な事件が続発している。
古代風の服装の兵士達の集団がどこからともなく現れるというのだ。当たるを幸いとばかりに周囲を破壊し、いつの間にか消えるという。その兵士達は現れるたびに、国も時代も違っている。古代ペルシャ風にローマ風、インド風…古代中国風の時もあったらしい。

とりわけ、しばしば目撃されているのは暗く輝く宝石のような鎧を纏った者達―冥王軍だった。そして、現れたどの集団の場合でも、最低一人は指揮官と思しい冥闘士が目撃されている。

大きな被害はまだ出ていないが、冥闘士が関わっている疑いがある以上、聖域としては看過できない。
とはいえ、聖戦が終わり協定を結んでから、それほど長い時間が経ったわけでもない。聖域も冥界も、やっと聖戦の痛手を脱しつつあるところだ。聖域としても、今、冥界と正面切って問題を起こしたくない。

何故、会見を申し込んできたのか?
奇妙な兵士達は何者なのか?

一方で、この一連の事件は不可解な事が多過ぎるのも事実だ。ムウは考えながら階段を上り続けた。

『冥闘士達ならば、そんな奇妙な兵団を組織せずとも、自分達で戦う方が確実だろう。

第一、移動はどうしているのか?冥闘士といえど生きている人間だ。大量の人間を誰にも気付かれず出現させ、また撤退させるなど物理的に無理がある。
テレポーテーションを使えば何とかなるかもしれないが、冥闘士でそんな真似ができるのはミューくらいなもの。いや、ミューでも難しいだろう。それに、事件の発生場所と時間を考えると、到底一人で出来るとは思えない。


教皇との会見で、どんなカードを切ってくるのか……。』
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