ヘウン


□残像 10
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SuperJuniorメインダンサー
ウニョク(本名:イ・ヒョクチェ)突然の死!


先日△月○○日の□時頃、
ソウルにて千秋楽を迎えた
SuperJuniorのコンサート(SUPER SHOW)
終了後、体調不良を訴えたウニョク(本名:イヒョクチェ)さんは
すぐに病室に搬送されそのまま息を引き取りました。

詳しい原因は分かっていませんが、
最近、痩せすぎている、などというファンからの不安の声も上がっていたため、
やはり何かの病気だったのではないか、
という憶測も飛び交っております。

国民的アイドルの突然の死に
国内のファンだけでなく海外からも悲しみの声があがっています。


ウニョクさん死亡を受けてつい先程、
SuperJuniorが涙ながらの記者会見を行いました。






《...まさか、ウニョクの状態がこんなに悪いなんて、》


《気付いてやれなかったなんて、メンバー失格だと思っています。》


《どうして一言だけでも俺たちに相談してくれなかったのか、いまは悔しくてなりません。》


《僕たちは彼がメンバーだった事を誇りに思います。》














ブチッ















何度も聞いた、認めたくない現実。


いや、現実かどうかもまだ分かってない。


その事柄と向き合いたくなくて、
思いきり切ったテレビのリモコンを
乱暴にテーブルの上に投げ出す。



テレビでも新聞でもネットでも、
俺の記憶の中でさえも、

ヒョクチェは死んだ≠ト言ってる。


そんな事、あるはずないのに。

そんな事、あっていいはずないのに。



だって俺はまだこんなにも、
ヒョクチェを必要としているのに。























「.....。」

『......。』

「.......、」

『.......。』

「....、おい、」

『...........。』

「.....聞いてんのかよ」

『......。』

「...おい、ドンへ、」

『.........、』

「....、いい加減返事しろ。
落ち込んでたってどうにもならないだろ。」

『......。』

「...おいってば、なにか言えよ!」

『........。』

「....なんで今のニュース、消した」

『......。』

「...なんであの記者会見の時、何も言わなかった」

『.........。』

「ヒョクチェがどんな気持ちで逝ったか、
お前、少しは考えろよ....!!」

『....うるさい』

「.......、ドンへ、」

『うるさい、黙ってて』

「.......。」




事務所の一室に呼び出されて、
何かと思って行けばそこにはユノがいた。

ヒョクチェがいなくなってから
数日経ったけど、今は
Super Juniorというグループとしての活動は
自粛している。

個人でバラエティ番組に出てたメンバーも、
さすがにまだ休業中だ。

俺はレッスンすら手につかず、
宿舎の中で廃人のような日々を送る。

だって、おかしい。

なんでみんな、
ヒョクチェが死んだっていうのに
当たり前みたいな顔して仕事復帰の準備してるの?

ヒョクチェの事、
その程度にしか思ってなかったの?

何だよ、様子がおかしかったって。
何だよ、ある程度の覚悟はできてたって。

ヒョクチェは一度も、
俺に病気のこと相談してくれなかった。

何でだよ、トゥギヒョンとソンミニヒョンにだけ教えるなんて。

本人から何も言われないのに、
気付くはずないじゃないか。

なのに皆だけ理解したような顔して、
俺を騙してたんだ。

それでいざヒョクチェが死んだら
手のひら返したように忘れて仕事準備。

薄情者ばっかりだ。
本当に吐き気がする。



「....それは、違うだろ。」

『......。』

「....悲しくないはずなんて、
....あるはずないだろうが。」

『......。』

「...でもな、よく考えろ。
...ここでいつまでも悲しんで、
仕事もしないでずっと泣き続けて、」

『.....。』

「...そんな事、ヒョクチェが望むか?」

『.....。』

「望まないだろ。
...みんなその事をよく分かってるから、
...だから涙を呑んで、前に進もうとしてるんだろ。」

『.....。』

「...お前はもう少し、大人になれ。」

『......。』

「ガキみたいなお前でもちゃんと面倒見てくれるヒョクチェは、もういないんだからな。」

『.....。』



ユノが言う言葉が、
世間的には正しい事だって
本当は俺だって分かってる。

ただそんな正論が、
今の俺にはキレイゴトにしか
聞こえなかった。

ヒョクチェは、もういない

ここ最近で、一体
何度聞いた言葉だろうか。

現実はゆっくりと、
しかし確実に俺の心をえぐってゆく。


ここは現実か、それとも夢の中か。


夢の中だったら、どんなに良かっただろう。

宿舎の俺の部屋の窓から差し込む小さな光と
そんなのどかな風景に不釣り合いな
目覚まし時計の音で目が覚めて、

それでも気持ちのいい朝は
眠くなる衝動を抑えきれずに
布団から手を出して目覚まし時計を
止めることすらおっくうで、

そうこうして
鳴り響く音を放置していたら、
声がどこからともなく飛んできて、
いきなり部屋のドアが開くんだ。

そうしたらそこには君がいて、
怒っても可愛いその顔で、
俺に向かって言うんだ。


ドンへ、五月蝿い!!



























ああ、そっか、これは夢か。


夢だから、こんなにあっさりしてるのか。


夢だから、こんな有り得ないことが続くのか。


夢だから、俺はこんなに冷静にものを考えられるんだ。



夢って、どうやったら覚めるんだっけ。

...ああ、にしても随分と長い夢だなぁ。

目を覚ましたら、ヒョクチェに言おう。

ヒョクチェが死ぬ、夢を見た≠ト。

きっと困ったみたいに笑って
なにそれ。て言うと思うんだ。

だから、こうやって返事をする。

でも、現実のヒョクチェは生きてる。

そしたらきっとまた困ったみたいに笑って
当たり前だろ。馬鹿じゃないの?
て返してくれる。


そうだよね、馬鹿みたいだ。

君がいなくなるなんて、
本当に馬鹿みたい。




そうだよ、これは夢なんだ。


夢に決まってる。



だってさ、ほら。


こんなの、おかしいじゃないか。

こんなの、あるはずないじゃないか。



















































涙か、こんなにも溢れてくる。







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