ヘウン
□残像 3
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「...え、言わな...かった?...ドンへに?」
「...うん。いろいろ迷惑かけたのにごめんなさい、ヒョン。」
「...いや、それは別にいいけどさ...、
何かあったの?」
今日のバスにはまた、俺の秘密を知っているメンバー3人が集まっていた。
マネヒョン、トゥギヒョン、ソンミニヒョンだ。
俺からの意外な報告に、みんな口をあけて驚いている様子だった。
ドンへの部屋に行って一緒に寝たあの日から2〜3日たってからの報告となってしまったことに、俺は反省した。
あれだけの勇気をくれたヒョン達に申し訳ない気持ちと、勇気を出し切れなかった自分を情けなく思う気持ちと、なんだか入り交じった自分の感情が怖かった。
「...あったといえばあったけど、...
別にドンへと衝突が起こったわけじゃない」
「...じゃあどうして...、あんなに決意固かったのに....」
「...ヒョン、俺さ、やっぱり...、」
「...なに」
「...ううん、なんでもない。
...ただ、駄目だと思ったんだ。
俺の気持ちを伝えたら、俺とドンへの関係は崩れる...、とか、そういう問題じゃなくてさ...。」
「?うん」
「...急に、ドンへが怖くなった...、んだ。」
「....。」
「...俺ってつくづく人見る目ないな〜、って思った。」
「....。」
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《ドンへ側》
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最近、ヒョクが変だ。
俺といると、辛そうな、でもどこか幸せそうな顔をする。
目の前に子どもがいるのに、抱きしめてあげられない母親みたいな。
いや、そうなると俺は子どもか。
俺と話してると、いきなり泣きそうな顔をしたりもする。
もともと大きくて、黒くて、綺麗な目を
さらに大きく見開いて、その瞳に俺を写すんだ。
俺にとってヒョクは親友だし、メンバーだし、家族みたいなものだし。
一度だけ、ヒョクチェに言ってみたことがある。
”最近どうしたの?”
”食欲ないね”
”どこか調子悪いなら、病院行きなよ?”
それを言ったとき、ヒョクは困ったような顔はしていたけど、どこか嬉しそうだった。
”...ありがとう、そうする。”
そう言っていたあの日のヒョクチェは、いつも以上に輝いていて。
きらきらした笑顔が、眩しかった。
俺は昔から、何度この笑顔に救われてきたのだろう。
ヒョクチェが大切で、彼と同じグループのメンバーになれたことが、すごく嬉しかった。
俺がヒョクチェと一緒にいるようになって、俺のヒョクチェに対する独占欲は増していった。
ヒョクチェは友達が多い。
その分、友達一人に割ける時間は普通の人より少ない。
でも俺は、ほかの人間が俺より長い時間、ヒョクチェのそばにいることが許せなかった。
────ねえヒョク、今夜は誰とあってるの?
────共演者で飲み会?
────なにそれ、なんで俺は呼んでくれないの?
────なんで俺は、共演者じゃないの?
寂しがり屋の俺は、側に誰かいないと死んじゃうんだよ?
俺をおいて、共演者をとったのはヒョクじゃんか。
なのに寂しくてたまたま宿舎にいたメンバーと一緒に寝てるのを見ると、ヒョクチェはとてつもなく悲しそうな顔をする。
「...ヒョクチェのせいだもん...」
そう呟くと、ヒョクチェはまた困ったような顔して、俺を見るんだ。
ねえヒョクチェ。
君のその透き通った瞳に映り続けてるのは、俺だけだよね?
もし違うなら、正して。
俺以外を見ないで。
ヒョクチェの一番の親友はこの俺でしょ?
ヒョクチェとの時間を取るために、俺は彼女との約束をほっぽり出して君に会いにいくんだから。
この自分でも怖いくらい純粋な感情が、俺の原動力なんだ。
子どもは成長したら親離れしないといけないって言うよね。
でもそれって同時に、親も子ども離れしないといけなってことなんだ。
────ヒョクチェから離れないといけないって言うなら俺、一生子どものままでいい。
そんな俺の言葉を聞いて、周りのメンバーは俺によく言う。
「それって恋なんじゃないの?」
...は?
何言ってるの?
大切なヒョンたちだけど、そんな事だけは言わないで欲しい。
そんな軽々しいものじゃないの。
恋?
だって俺もヒョクも男だよ?
そんな事、あるはずないじゃない。
俺たちは一生親友。
互いに互いがいなきゃ生きていけないくらいの関係じゃなきゃ、俺は満足しない。
俺もヒョクも、きっと結婚なんてできないよ。
そんな事したら、互いに会える時間が限られちゃうでしょ?
ヒョクって女の子と付き合ってもそんなに長く続かないでしょ?
ヒョクチェは気付いてないんだろうけど、あれ俺のせいなんだ。
ヒョクの彼女口説いて、ヒョクチェと別れさせるの。
ヒョクチェも馬鹿だよね、本当。
あんなにコロコロ心変わりする女の子ばっかり好きになってさ。
...昔から、君が好きになる人は悪い奴ばっかりだ。
自分でも異常だってことくらいわかってる。
でも、俺がこんなこと思ってるなんてメンバーはおろか、誰も知らないよ。
家族ですら...ね。
...ああ、でも怪しんでる人達は居るんだった。
俺と一緒にいない時のヒョクチェを知ってる人達。
ソンミナヒョンと、あとシア・ジュンス。
でもあの人たちにだって、ヒョクチェは渡さないんだから。
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