一柳 昴

□花火
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(あ〜ぁ、せっかく浴衣着たのになぁ・・・)
そのまましばらく廊下に佇んでいると、後ろからそらの声が響いた

そら「あ〜、羽純ちゃんっ♪」
振り返って見ると、そらが手を広げて走って来ている
それを見た羽純は、思わず身構えてしまった

そら「うわぁ、浴衣可愛いね〜っ」
避けようとした羽純だが
下駄が絨毯に引っかかったようで、身体がよろけてしまう
(うわっ!転んじゃうっ!?)

昴「・・・っと!」
羽純の背後から声がしたかと思うと、身体が回転して抱きしめられた
(!?)
昴「そら!馴れ馴れしくするなって言ってるだろう」

そら「うわっ!昴さんっ!?」
昴の姿を見て止まろうとしたが、勢いが止まらなかったようだ
そのまま羽純の横で、勢いよく転がってしまった

そら「ったぁ・・・」
起き上がりながらムクれるそらを、昴がニヤリと見下ろす

昴「羽純に抱きつこうとするからだ」
そら「単なる挨拶だってば!」
昴「・・・じゃあ、そういうのは班長にすればいいだろ」
そらの後方を見ると、意地悪く笑った

そら「班長に抱きついたって、何も楽しくないっ!」
桂木「・・・俺も、楽しくはないぞ?」
その声に驚いて振り返る
そら「うわっ!班長っ!?」
いつの間にか、すぐ後ろに桂木が立っていた

桂木「それより、そら
   急な話だが、総理の警護で出ることになった」
そら「え〜、今日は花火大会なのに〜」
どうやら、一緒に見ようと思っていたらしい

桂木「総理はお忙しいんだ、仕方ないだろう!」
そら「羽純ちゃんの浴衣ぁ〜」
名残惜しそうに見ているそらの腕を、桂木が掴んだ

桂木「わかった、わかった・・・
   あぁ、昴、羽純さんの事は頼んだぞ」
昴「了解」
桂木「そら、行くぞ」
そら「うぅ・・・・了解」
しぶしぶといった様子で、そらは桂木の後について行った

昴「羽純、大丈夫か?」
2人が去ったのを見届けて、そっと腕をほどく

『うん・・・ありがとう
 でも、昴さんは行かなくてもいいの?』
昴「あぁ、俺は元々上がりの時間だからな」
そう言いながら、羽純をマジマジと見た

昴「・・・その浴衣、なかなか似合うな」
『ホントですか?」
昴に褒められ、嬉しそうに笑う

昴「でも、ちょっと可愛さが足りない!」
『えっ!?』
品定めをするような視線に、一歩後ずさってしまった

昴「最近、浴衣用でレースの付いた飾りがあるだろう
  何でそういうのにしないんだ?」
腕を組みながら真剣に見られると、言葉につまる

『だって・・・普通の浴衣が好きなんだもん』
昴「全体的なことじゃない
  帯とか襟元とかに、チラ見せでレースをあしらうんだ!」
『はぁ、そうですか・・・
(昴さんが乙メンだってこと、忘れてたよ・・・)』
昴の力説に、思わず溜息が洩れた

昴「よし、今度一緒に浴衣を買いに行くぞ」
『えぇっ!?』
昴「俺が、お前に似合うヤツを見立ててやる!」
『はぁ・・・』

この情熱(?)は、一体どこからくるのだろう
そんな事を思いながら、SPルームへと歩きだした
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