石神秀樹

□中庭で
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桂木に促され、半ば強引に中庭へと連れ出された石神
お互いが向きあうと、桂木は真っ直ぐ石神を見据え
石神はその視線から逃れるように視線を逸らせた

桂木「石神、どういうことなんだ?」
しばらくの沈黙の後、ふいに口を開く
石神「・・・・・」
桂木「今回ばかりは、俺も昴の意見に賛成だぞ?」
その言葉を聞き、石神も桂木の視線を受け止めた

石神「さっきも言ったでしょう?
   私にも護りたいものがある・・・と」
つとめて冷静に言ってはいるが
感情を抑え込んでいるのが手に取るように分かる
桂木も、そんな石神を見るのは初めてだった

桂木「護るためなら、羽純さんを傷つけても構わないのか?」
石神「私に関わったせいで、危険に晒すよりはマシでしょう?」
真っ直ぐに見返してくる石神に、桂木は苦笑する

桂木「石神・・・
   お前が、そこまで本気になっているのを見るのは初めてだな」
石神「なっ!?」
桂木「今、自分がどんな顔をしてるか気付いてないだろう?」
そう言われて、石神の視線が揺れた

桂木「今のお前を見たら・・・
   サイボーグなんて言うヤツはいないだろうな」
苦しげで切なげで、そして哀しげな表情
桂木「お前、さっきもそんな表情で羽純さんを見てたぞ?」
石神「・・・・・」

ふっと視線を逸らせると、そのまま羽純の部屋の方向を見る
石神(なっ・・・?)
すると、窓辺に立ってコチラをみている羽純と目が合った
今にも涙がこぼれ落ちそうな表情を見て、石神の胸もチクリと痛む

桂木「お前が、彼女にあんな顔をさせてるんだ
   それでも・・・何も言わないつもりか?」
部屋の方をチラリと見た桂木が、石神の横顔に言う

桂木「・・・昴はきっと、上手く彼女を慰めるだろうな」
羽純の横で意味ありげな笑みを浮かべる昴に、石神は顔をしかめた
石神「一柳・・・」
ほぼ無意識に呟いたであろう言葉
それを聞いた桂木がクスッと笑う

桂木「なぁ、石神・・・
   他の男に任せるくらいなら
   自分の側において、自ら護りたいとは思わないのか?」
石神「・・・・」
桂木「そりゃあ、彼女を遠ざける方が簡単だ
   だけど訳も分からず遠ざけられた羽純さんの気持ちはどうなる?」

その言葉を聞いているのかいないのか
石神はただ黙り、遠く彼女を見つめるだけだ

桂木「この仕事をしている間は恋人を作らない・・・
   そう思ってる俺が言うのも変な話だがな」
溜息まじりの言葉に、石神は再び桂木の方を向いた

石神「私は・・・公安なんですよ?」
桂木「あぁ」
石神「誰かを特別に想うなんてことは、許されないんです」

まるで自分に言い聞かせるように告げると、桂木に向かって歩き出す
石神「だから・・・桂木班に任せたんです」
桂木の横を通り過ぎる瞬間、そうポツリと呟いた

石神「・・・警護課は、警護するのが仕事でしょう?」
チラリと視線だけ向けると、玄関の方へと歩き去る

桂木「もちろんそうだが・・・
   彼女の心までは警護できないんだ、俺達じゃ・・・」
桂木の方も、石神を見ないまま苦笑を浮かべていた

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