桂木大地

□紅葉
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女将「いらっしゃいませ、桂木様
   今年もおいでいただき、ありがとうございます」
桂木「ご無沙汰しております」
手を繋いで隣に立つ羽純を見て、女将がクスッと笑う

女将「フフッ、やはり素敵な女性をお連れになったんですね」
桂木「え、いや女将・・・まいったな」
嬉しそうに言われ、微かに頬を赤くしながら頭をかいた

女将「お部屋のご用意は出来ております
   こちらへどうぞ」
桂木「あ、はい、お願いします」
部屋へ案内しながら、女将はまだ嬉しそうに微笑んでいる

女将「桂木様は、毎年この時期になると、お一人で来られるんですよ?」
『え?そうなんですか?』

女将「えぇ、それが今年はお二人様でのご予約をいただいて・・・
   きっと、大事な方をお連れになるんだろうと
   私も楽しみにしていたんですよ?」
桂木「女将・・・」
さっきからずっと桂木の顔は赤いままだ

女将「・・・どうぞ、こちらです
   今年も、離れのお部屋をご用意させていただきました」
柔らかい笑みを浮かべたまま、2人を中へ案内する
桂木「ありがとう、女将」
案内された部屋はそんなに広くはない
けれど、女将が奥の障子を開けると川床が広がっていた

『わぁ・・・すごい!』
京都の川床を思わせる、川の上に作られた床
屋根はなく、代わりに一面の紅葉で覆いつくされている

桂木「毎年、これが見たくてここに来るんだ」
そのまま川床に出ると、ハラハラと紅葉が舞い落ちてきた

『素敵な所ですね』
手を繋いだまま2人で木漏れ日を見上げる
桂木「気に入ってくれたようで良かった
   きみにも、これを見せたかったから・・・」
『桂木さん、ありがとうございます』
嬉しそうに微笑む羽純に、桂木も微笑み返した

女将「・・・いつものお品でよろしいですか?」
荷物を置き、お茶を淹れた女将が声をかける

桂木「はい、お願いします
   彼女には何か別のものを・・・」
女将「かしこまりました、どうぞごゆっくり」
そう言うと、羽純に微笑みかけてから立ち去っていった
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