石神秀樹

□説教
1ページ/3ページ


桂木に用があって官邸に訪れていた石神
話を終えて廊下を歩きながら、ふと中庭に視線を移すと
奥の方で、人影が動いたような気がした

石神(ん?あれは・・・)
視線の先には、木に立てかけた梯子に乗っている羽純の姿
下では、そらと瑞貴が支えているらしい
それを認めると、急いで中庭へと向かった


木々が茂り、枝が重なり合っている場所
『ん・・・、もうちょ・・・っと』
片手で梯子を掴みつつ、反対側の腕は枝の先へと伸ばした

その伸ばした先には、脅えた子猫
どうやら迷い込んだ挙句、木に登って降りられなくなったらしい
『大丈夫だから・・・ほら、おいで?』
声をかけるが、子猫はジッと様子を伺っているだけだ

石神「・・・こんな所で何をやってるんです?」
感情を出さず、淡々とした口調で声をかける
そら「うわっ、石神っ!?」
思いがけない声がかかり、驚いて声をあげた

石神「広末、そんなに驚く事ではないでしょう?」
眼鏡を押し上げながら、冷たい視線を投げかける
そら「そんな事言ったってさぁ・・・」
小声でブツブツと呟くが、さらに冷たく睨まれた

石神「・・・そんなことより
   総理のお嬢さんが何をやってるんです?
   梯子に登るなどと・・・」
ちらりと上を見上げるが、まだ羽純は気付いていないらしい

瑞貴「子猫が降りられなくなってるのを、羽純さんが見つけて・・・」
ひょいっと石神に顔を向け、説明する
そら「それを助けたいから手伝って欲しい、って言われたの!」
2人が石神の方に意識を移したせいで力が緩んだのか、グラッと梯子が揺れた

『きゃっ!』
思わず腕を引き、梯子にしがみつく
瑞貴「大丈夫っ?」
そら「あ、ごめんっ!」
急いで2人が支え直すと、石神が溜息をついた

石神「羽純さん!」
そう上へ向かって呼びかける

『え?あれ?石神さん?こんにちは』
声に気付き、チラリと見下ろすとニッコリと笑い返す
けれど、すぐ子猫の方に向き直ってしまった

石神「こんにちは、じゃないでしょう
   後はこの2人に任せて、貴女は降りなさい!」
更に呼びかけるが、聞き入れる様子も無い

『大丈夫です、もう少しで届きそうですし・・・』
石神「はぁ・・・」
再び手を伸ばす羽純に、再び溜息が洩れた
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ