桂木大地

□敵対心
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官邸内、羽純の部屋

今日は、官邸で晩餐会が行われることになっており
羽純も、もちろん出席することになっている
準備をしなければ・・・と、服を選んでいる時だった

どういう雰囲気の物が良いのか迷っていると
ふいにドアが開いて、昴が入ってきた

昴「羽純、入るぞ」
『・・・・もう入ってるじゃないですか』
そう言いながら、呆れたように入り口を見る
ちょうどクローゼットから、ハンガーごと服を引っ張り出した所だった

昴「今日はそれを着るのか?」
『はい、そのつもりですけど?』
そう言いながら、手に持ってた衣装を昴に見せる

『ヘンですか?』
昴「・・・・」
一瞬考えるような顔をすると、昴もクローゼットを覗き込んだ

昴「それだと可愛すぎだ」
そう言うと、羽純の横に並び、中を物色する
昴「そうだな・・・うん、コッチにしとけ」
選び出したのは、タイトスカートのワンピースにボレロのアンサンブル
多少フリルの飾りがあるが、決して派手ではない

『え?どうしてですか?』
前にこの服を着たのは、公務でクラシックコンサートを聞きに行った時だ
大人の女性を感じさせるように、と用意したものだった

昴「今日は、お堅い連中が集まるんだ
  シンプルで清楚な方がいい」
『はぁ・・・、そうなんですか』
自分的には、大人っぽすぎて、似合わないと思っていた
けれど、昴が勧める以上、これを着た方が良いのだろう


・・・コンコン

昴から衣装を受け取った時、ふいにドアがノックされた

桂木「桂木です」
どうやら、桂木が様子を見に来たらしい
『あ、はい、どうぞ?』
ドアが開き、桂木が部屋に入ると、いきなり驚いた表情に変わった

桂木「昴、何してるんだ?」
昴「何って・・・晩餐会の服選びですよ?」
当然のような顔をして桂木を見る

桂木「だから・・・
   羽純の服を、なぜお前が選んでるんだ・・・」
思わずため息がもれ、呆れ顔で2人を眺めた

昴「そりゃ、羽純が晩餐会で引き立つように、ですよ!
  今日は面倒な大臣連中が集まるんですし・・・」
桂木「面倒って、お前なぁ・・・」
そうだとは思っても、真面目な桂木は同意できない

昴「あ、羽純
  ヘアスタイルはアップにしてもらえ
  それと、イヤリングとネックレスはパールだ!」
『あ、はい、分かりました』
そう言うと、衣装を持ってスタイリストの待つ部屋へと出て行った


そして、羽純を見送った2人が部屋に残される


桂木「はぁ・・・
   女の子って、色々と準備が大変なんだな」
そうため息まじりにつぶやくと、昴がクスッと笑った
昴「桂木さん・・・手に負えないようでしたら
  羽純は、いつでも俺が引き受けますよ?」
意味深な笑みを浮かべる昴に、桂木の表情が真剣になる

桂木「それは、断固!拒否する!!」
昴「プッ!」
桂木の真剣な言い方に、つい吹き出してしまった
本音が混ざっているとは言っても、やはりからかい甲斐がある

桂木「何だ!?」
一方の桂木は、真剣そのもの
何に対しても真面目な桂木らしい反応とも言える

昴「そんなムキにならなくても・・・」
桂木「・・・・・」
肩を震わせ、笑いをこらえる昴を見て
桂木は苦笑しながら軽く頭をかいた

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 ・

・・・2時間ほど後

晩餐会が始まり、和やかなムードが漂っている
要人が多く集まっているので
警護のため、ドアの内部で立っている桂木と昴

昴「・・・モテまくりですね」
前を向き、晩餐会の様子を見ながらふいに口を開いた

桂木「ん?」
昴「羽純ですよ・・・
  あれ、絶対『ウチの息子に・・・』とか言われてますよ?」
平泉と挨拶回りをしている姿を目で追っていると
羽純が、困ったような笑みを浮かべている
平泉の様子からしても、そういう会話をしていそうだ

桂木「そりゃあ、彼女は魅力的だからな」
全体を見渡しながら、他人事のように言う
昴「・・・余裕ですね」
桂木「・・・・・」
無言の桂木をチラッと見ると、言葉を続けた

昴「自信があるってことですか?」
桂木「そんなもの・・・」
その先に続ける言葉を、思わず飲み込んでしまう

桂木(そんなものがあるなら・・・
   俺は、こんなに胸が苦しくなったりしないさ)

昴「・・・たまには、素直になったらどうですか?」
そう言われて、桂木は驚いたように昴の方を見た
警護中だというのに、表情に出ていたのだろうか?

昴「あいつは、全てを受け入れますよ?」
自分より、羽純の事をよく分かっているような口ぶりだ
昴も桂木の方を向き、意地悪く笑った

桂木「お前ってヤツは、まったく・・・」
思わず呆れたような表情になる
桂木「・・・だから、お前にだけは油断できないんだ」
ため息交じりにつぶやくその言葉は、昴の耳に届いていなかった

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