桂木大地

□桜の下で
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満開の桜のトンネル
あちらこちらで、桜見物に来た人たちが足を止めている

『わぁ・・・素敵ですね』
桂木「あぁ、本当だな」
出かけた先での公務が終わり
この後の用事が入っていないので、近くの公園に来ていた

『こんな桜並木があるなんて、嬉しくなっちゃいますね』
桜の花びらが舞う中、少し先を歩いていた羽純が振り返る
桂木「何だか嬉しそうだな」
『だって・・・
 こんな素敵な場所を、桂木さんと一緒に歩けるんだもん』
そう言いながら桂木の横に並ぶと、自分の腕を絡ませた

桂木「羽純・・・」
照れくさそうに微笑み、羽純をみつめる
『ふふっ、“困ってしまう”・・・ですか?』
桂木「そうだな」
そう言うと、苦笑しながら軽く頭をかいた

桂木「キミみたいな若い子と、腕を組んで歩いてるなんて
   周りからどう見られてるのか、気になるよ」
『もぅ!桂木さんは、いつもそればっかり』
桂木「だけど視線を感じるんだ・・・」
(それは桂木さんがカッコイイからなのに・・・)
言葉にはせず、じっと桂木を見つめた

桂木「どうした?」
『ん?桂木さんを独り占めだなぁ・・・って思って』
桂木「んなっ!?」
優しい微笑みから、一気に驚いた表情に変わる

『どうしたの?』
桂木「いや、その・・・
   キミが急に可愛い事を言うから、戸惑ってしまって」
うっすらと赤くなっている桂木を、羽純は嬉しそうに見ていた

『あ、ほら、あの木、大きいですよ〜』
スルリと腕を離して駆けだす
『桂木さん、早く早く♪』
ひときわ大きな木の前に走り寄り、桂木の方を振り返った

桂木「あぁ・・
  (あんな嬉しそうに・・・本当に可愛いな)」
ゆっくりと桂木が歩み寄った時、いきなり突風が吹き上げた

『きゃぁっ!!』
突風で桜の花びらが舞い、一瞬、羽純の姿が見えなくなる
桂木「羽純っ!?」
さっきまで羽純がいた場所に向かって、桂木が手を伸ばした

『はぁ・・・びっくりした・・・』
突風に驚いて、羽純が目を開けると
桂木に、しっかり抱きしめられていた

『(えっ!?)
 あの・・・桂木さん??』
桂木「はぁ・・・」
羽純の声を聞いて、桂木が溜息をつく

桂木「君の姿が見えなくなったから・・・
   そのまま、消えてしまうのかと思ったよ」
『桂木さん・・・』
しっかりと抱きしめたまま、羽純の首元に頭を埋める桂木

『あの・・・誰かに見られちゃいますよ?』
桂木「構わない・・・」
そんな2人の上に、桜がハラハラと舞い落ちてくる

桂木「今でも・・・
   キミが、側にいるのが夢なんじゃないかと思う時がある
   こうして抱きしめていないと、不安になるんだ・・・」
そんな桂木の言葉に、羽純は幸せそうに微笑み
そのまま、桜の隙間から見える青空を見上げていた

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