桂木大地

□SPの誇り
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ガラス張りのエントランスホール
今日は、この建物のオープニングセレモニーが行われている

羽純は総理の代理として出席し、桂木が側で護衛に付いていた

司会者に紹介され、羽純がマイクの前に立つ
『本日は、この様なセレモニーにお招きいただき・・・』
キリッとした表情が、ライトに照らし出される
総理の代理として申し分のない様子に、会場の客達も羽純を見つめた

そして、桂木もその横顔を目を細めて見ていた
桂木(きみにはいつも驚かされてしまう
   普段の姿からは、想像できないほど凛々しいよ・・・)

無事に挨拶も終わり、羽純が席へ戻ろうとした時
いきなりホールに銃声が響いた
客達の悲鳴が一斉に起こる

桂木は、銃声を聞いた瞬間、羽純に走り寄り
抱きしめた状態でしゃがませた

『なっ・・・何っ!?』
桂木「各自、報告っ!!」
辺りに目を配り、インカムで他のSP達に指示を出す
まず、コチラに向かっている人物が居ないことを確認した

桂木「高瀬さん、危険ですのでこのままで!」
完全なSPモードになり、羽純を抱きしめたまま周囲の動きを探る

外を警備していた警官達が建物に入り、客達を誘導している
SP達からは「不審者が見当たらない」と各自報告を寄越してきた

桂木(何が目的だ?)
羽純の身体から腕を解き、自分だけ立ち上がる
その時、唯一自分の方を向いている一人の男と目が合った

桂木(あれは・・・っ)
そう思った瞬間、その男が銃を構えるのを確認する
本能的に羽純の前にしゃがみ、彼女の盾になる
それとほぼ同時に、銃声が響いた

『桂木さんっ!』
視界の中で血が飛び、桂木が撃たれたのだと知る
桂木は、片腕を押さえて苦痛の表情を浮かべていた

『桂木さん、大丈夫ですか!?』
腕に縋ろうとする羽純を片手で制して、男の方を見た
SP達も男の存在に気付き、走り寄って来ている
その気配を感じた男が後ろを振り返り、SP達に向かって銃を撃った

桂木「なぜ、貴方が・・・っ!」
腕を押さえたまま、男に声をかける
男「・・・久しぶりだな、桂木」
その男は、無表情のまま歩み寄ってきていた

(あの人と桂木さん、知り合いなの!?)

桂木「SPだった貴方が何故です?持田さん!?」
持田と呼ばれた男が立ち止まり、フフッと不敵に笑う
じりじりと警官達がSP達の指示で、男の周りを囲もうとしていた

持田は、まだ桂木が普通のSPだった頃
そのチームを治める班長だった

確か職務中、利腕に銃弾を受けてSPを辞めたハズだ
拳銃の腕が確かで、統率力のあった彼を
桂木は尊敬し、彼を目指していた

持田「用があるのは、後ろのお嬢さんだけだ
   桂木、そのお嬢さんを渡せ」
桂木「警護対象を渡すわけにはいきません!!」
自分の後ろに羽純を庇い、持田を睨みつける

『私に、何の用ですか?』
首に巻いていたスカーフを外しながら、桂木の横に移動する
桂木「高瀬さん!」
羽純の姿を見た持田が、余裕の笑みを浮かべた

持田「アンタに逢いたいと思ってたよ」
『私に?』
持田「現総理の娘・・・」
そう言いながら、ゆっくりと羽純達の方へと歩み寄ってくる

持田「アンタ個人には何の恨みも無いんだが
   俺をこんな風にした政治家どもへの見せしめに・・・」
桂木「なっ!?」
その言葉に桂木が立ち上がる
桂木の腕を止血しようとしていた羽純も、一緒に立ちあがった

持田と桂木の間に、冷たい何かが張り詰め
周りで控えているSPや警官達も、そのまま動けないでいた

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