短篇

□桜と第二ボタンと花束と
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『せんぱいいいいぃぃ……』


大好きな先輩
初めて目が合った時から、大好きなひと








「煩ぇ。つーかオイ、鼻水つけんな」


『酷い!でも好き!!!!』


「分かった分かった」





今日で卒業してしまう先輩
明日からは別々の学校に通わなきゃならない
毎日会えないなんて、わたし、死んでしまうんじゃないだろうか…





「おら、ちゃんと顔拭け。今のお前、不細工だぞ」





そういいながら、自分の学ランの袖でわたしの顔を力任せに拭いた
ナニソレ、反則…





『先輩、留年すればよかったのに……』
「あァ?」
『喧嘩ばっかしてた癖に!授業サボってばっかだった癖に!』
「んなモン銀魂高校にゃ関係ねぇだろ」





う……確かに……





「仕方ねェだろ。お前が生まれてくるのが遅かったんだよ」





ぽん、と先輩がわたしの頭に手を置いた





『先輩は早く生まれちゃったからこんなに小さいん
「なんか言ったか」
『ううん、なんにも!』





力一杯頭を押される
どんだけ身長気にしてるんだこの人は!



こんなどうでもいい出来事も、わたしは幸せだなぁって思う
でも明日からはあまり会えなくなる、と思ったらまた心臓のとこがちょっと痛くなった





『やっぱり寂しいいい……』
「だから泣くなって」





先輩は困った笑顔を浮かべながらわたしの顔を撫でた





「お前ェも大学受ければいいじゃねェか」
『……今からでも間に合うかな…』
「…………受かるよ」
『なんだその間は』





自信なさそうにいうんじゃないよ!
まぁわたしの学力に問題があるんけどさ!





「……よし、じゃあこうするか」





少しの間のあと、先輩は口を開いた





「俺がお前に直々に勉強教えてやる。だからお前も死ぬ気で勉強しろ」
『え、なんで?どーゆーこと?』
「最後まで聞け」
『はい、ごめんなさい』





わたしは背筋を伸ばして先輩をみた





「もし、もしもだ。奇跡が起きて、お前がうちの大学受かったら、」





ちょっと、少しくらいは期待してくれてもいいじゃん
という言葉は、先輩の真剣な顔をみて飲み込んだ





「その時は、お前からずっと離れねぇって約束してやるよ」
『え?』
「来年の今日、お前を貰いにきてやるっつってんだ」





え、と……
それってつまり………





『先輩大好き!ラブ!愛してる!』
「痛ェ。つーか受かったらの話だっていってんだろ」
『受かるよ!だって先輩が教えてくれるんだもん!』
「お前は手に負えない馬鹿だろ?」
『酷い!でも
























「好き、だろ?ひな」


『………っ……!!!!』








桜舞う3月
わたしの手には、先輩の第二ボタンと小さな花束と桜の花びらが1枚
来年の今日も、今日とおなじ、
先輩とここに立っていられたらいいな




桜と第二ボタンと花束と




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