短篇
□唯一無二の存在に、わたしはなりたい。
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『晋助』
名前を呼ぶと、彼の視線は空に浮かぶ月からわたしへと移された
ああ、なんて寂しそうな瞳
「ひなか…なんだ?」
ふ、と微笑んだ晋助の寂しそうな笑顔に、なんだかすごく切なくなった
『しん…す、け……?』
ああそうだ…
確かあの日も………
松陽先生が亡くなった日も、空には今日みたいに大きな満月が輝いていた
「…?ひな?どうし…っ!!」
『晋助っ…!』
彼がこのまま消えてしまいそうで、
松陽先生のところへ行ってしまいそうで、
わたしは思わず彼に駆け寄り、抱きしめていた
「ひな?」
『…なんでもない……なんでも、ないよ…っ……』
わたしは先生の代わりにはなれない
わたしじゃ晋助を支えられない
晋助から唯一無二の存在が無くなってしまったあの日から
晋助を支えるのは自分自身になってしまった
支えたい、助けたいのに、
わたしにはそれができない
わたしも松陽先生のような、
晋助を支えてあげられる、
唯一無二の存在になりたいのです
唯一無二の存在に、わたしはなりたい。