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□砂の中の王国
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笑顔をたずさえた彼女に目を細める。
サラサラ。サラサラと砂が頭に落ちて腕を伝い、足元に積もる。
目の前のガラス板に手のひらを押し当てる。叩いてみても鈍い音が反響するのみで割れる気配はない。

死ぬのだ、と気づいた。このまま砂に溺れて死ぬのだと。
水の中にいる時のような焦燥感はなかった。
ただ冷静にゆっくりと、もうどうする事もできないのだと理解した。

彼女は微笑んでいる。
砂時計の中にいる俺を見つめて。


砂の中の王国


 

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