その他 book
□田舎暮らし
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「お前がいいならいいぞ」
そう言われて俯く。
すきだから北海道まで一緒に来てくれないか、と。
ホロホロさんは北海道に旅立つ日にそう言った。
「私には葉さまが居ますから」
「葉はお前のことなんとも思ってねぇぞ」
「わかってます!そんなこと…」
下を向いたままの顔をあげることはできない。
涙が滲みそうになったが、それは彼のためでなく自分の為だった。
「そうか、まぁそうだと思ってたよ」
ホロホロさんは靴を履き、コン、と踵を鳴らすとそれ以上何も言わずに出て行ってしまった。
私は麻倉家に仕えなきゃいけない身なのです。例えあなたの事が好きでいようが私はここにいなければならないのです。
それでも、ああ、それでも、少しだけ、
たまおは普通に恋し普通に同棲する生活を夢見てしまいます。
「できるならば、何も聞かず連れ去っていただきたかった」
その声は誰の耳にも届くことはなく。
田舎暮らし