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□裏山の祠
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「すみません」とたまおが何度も謝る。
「別に暇だったからいいよ」と返すと嬉しそうににっこり笑う。
炎に遊びにきた俺は、たまおに頼まれ裏山に来ていた。
何か用があるのかと問えば、困ったように笑ってはぐらかされる。
「アンナさまに知られちゃうと怒られちゃうんです」
「告げ口しねーから教えてくれよ。な、コロロ?」
「クルッ」
フキを曲げる勢いでぎゅっと握り込み、コロロがガッツポーズを取る。
それを見て、少し悩んだように唸り、たまおは一つため息をついた。
「あそこに、祠があるでしょう?」
すっとたまおが指差した方向には確かに小さな古ぼけた祠がある。
「よくお参りにくるんです」と付け足された言葉の、どこにアンナが怒るポイントがあるのかわからなかった。
「何の神様がいるかわからない古い祠は、本当はお参りしちゃ駄目なんです」
「じゃあたまおは何でお参りしてんだよ」
「あの子、お稲荷さんの姿してるから、ポンチコンチの親戚かなぁって」
ホロホロさんは真似しないでくださいね。そう言ってにっこり笑った笑顔は、
いつも謝っているだけの顔より綺麗だと感じた。
「油揚げ、持ってきたよ」
しゃがみこんだたまおの背中を見つめていると、コロロが低い声で「クルッ」と大声を出す。
なんだ、腹でも減ってんのか?あとでお前にも油揚げくらいやるって。
裏山の祠