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□面倒事は持ち込まないで
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焚き火の灯りが地を照らす。
ジューダスとカイルでそれを囲っていると、後ろから悲鳴が聞こえて振り返る。

鳥、だ。
真っ先に目に飛び込んだのは鳥。
獰猛そうで強そうで、低く飛行する鳥。
その鳥をバックにロニがこちらへ走ってくる。
「ナナリー助けてくれ!」なんて叫んでいるので、状況を理解するのにさほど時間は要らなかった。


「ああ全く、本当に馬鹿なんだから」


頼ってくれるのは気分がいい。弟と暮らしていた日の事を思い出してしまうけれど、私は姉という立場が性格にも合っているのだろう。
後ろで焚き火を囲んで座るジューダスのため息が聞こえた。

あたしが弓を取り出すと、カイルも「ロニってば」なんて言いながら剣を抜く。
あれ、あんたそんな立ち位置だったかい?いつもならロニと一緒に追いかけられる立場だった筈だけど?

キリキリ、と弓を引きしぼる。
アイツのなっさけない顔に射ろうかと一瞬思いついたが、
「ナナリーナナリー」と叫ぶアイツを見ていると胸が痛んできたので大きな鳥に向かって矢を射る。

ビシ!と大きな音を立てながら矢は鳥の頭を射ち、羽根を辺りに散らせながら地に倒れた。


「さすがナナリー様、ありがとう、助かったぜ」


なんでこんなのしょって来たんだい、とため息混じりに聞くと、ロニはにやっと笑って私に耳打ちする。


「良い場所見つけたんだ。景色が良くてさ。女の子落とすのに使えそうなんだよ」


キリ、と再度ロニの顔へ弓を引きしぼると慌てたようにこう付け足す。


「あ、もしかしてナナリーも行きたいのか!?いいぞ、いいぞ、連れてってやる!」


後ろでジューダスとカイルの、呆れたようなため息が聞こえた。
あんたが女の子を落とそうが落とせまいがこっちは関係ないっての!
関節技を決めると先ほどよりも大きな声で訳のわからないことを叫ぶ。


面倒事は持ち込まないで



 

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