SOUL EATER book4

□自分にとっての正義
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「マカ!!」


少女がなぜそこまで怒るのか理解に苦しんだ。。
ヒョロっちい高校生がカツアゲされてた。たったそんだけで、少女は激高して彼らを追うように路地へ駆けた。
思わず少女の名を叫ぶもこちらを振り向きもしない。

ほっとけばいいんだ。どうせ他人だろ。
舌打ちを鳴らして路地に入りマカの姿を探す。
仁王立ちのマカをすぐに見つける、その目の前にはさっきのカツアゲしてた男とヒョロイ学生。
小さなマカの背中には怒気を孕んだ空気がまとわりついて、思わずつばを飲み込んだ。


「その人を離せよ」


じゃないと殴るぞ、と付け足しそうな調子だ。
おいおい、とため息と一緒に小さく漏らす。
少女の肩に手をかけようとした時、少女が走り出した。

路地に入りその背中を見たときから感じてた嫌な予感が当たってしまった。

この馬鹿はガラの悪い男に突っ込んでいってしまった。
まさか男も少女が突っ込んでくると思ってはいなかったのだろう、一瞬たじろいだがすぐに右拳を振り上げる。

何か考える間もなく右足が地面を蹴る。

ちっちゃい足じゃ先に走り出してもすぐ追いつける、
掴んだマカの服をぐいっと後ろへ引っ張った。
マカが一瞬宙に浮いたのは申し訳なく思ったが、どてん、と後方から尻餅の音が聞こえて少し安堵した。
後ろに行った左手をそのまま握り拳に変えた瞬間、左から男の拳が飛んできた。
左足を前に出して拳を避けずまともに喰らい、その勢いも使って拳を男の頬へ。

鈍い音と同時に鈍い痛み。拳は男の頬へクリーンヒット。
吹っ飛んだ男が壁に顔をぶつける、痛そうだ。
ずるずる、と音をたてながら男が倒れて、やり遂げた俺はフンと鼻を鳴らした。

一緒に連れ込まれたヒョロイ学生をちらり、と見やる。
俺と目があった瞬間喉に急に空気が入ったような悲鳴をあげた。
そしてよろけながら立ち上がって走り逃げていく。
なんだあいつ、言いようのないムカつきを覚えたが、まぁそんなことはどうでもいい。


「マカ」


問題はこいつだ。
尻餅をついたままぽかんと口をあけるマカに軽いげんこつを喰らわせる。
小さな悲鳴ののちにじと、と俺を見上げる。


「なによ」

「なによじゃねーんだよ。何やってんだお前」

「いいじゃない別に。殴られても文句は言わなかったよ。人が困ってんだから助けるの当たり前でしょ」

「その困ってるやつは御礼もせずにどっか行ったじゃねーか。ありがた迷惑だったんじゃねえの」

「じゃあなに、見捨ててればよかったって言うわけ?」

「おう」

「それは結果論じゃない!」

「とりあえず場所変えるぞ」

「ブラック☆スター喧嘩強い癖になにそれ!意味わかんない!馬鹿じゃないの!?」

「馬鹿はお前だろいい加減にしろ」


ぎり、とマカの歯ぎしりの音が聞こえた。
マカが道の小石を俺に投げる。
よけられず腹に当たったそれは何の痛みも与えなかった。


「なんのつもりだ?」

「喧嘩売ってんの」

「買うと思ってんのか?」


ため息混じりに言う。
マカの目はきつく俺を睨むように見ていた。


「なにをそんなにムキになるのかわかんねえな」


たかが他人じゃねえか。
他人の為に殴られるなんて頭おかしいんじゃねえの。


「わかんないならわかんないままでいい。これが私の正義だもん。わかって欲しくない」

「それじゃ困るんだよ」

「なんでよ」

「俺の知らない所でお前が殴られちゃ困るだろ」


腰を曲げて手を差し出す。
マカはなんの迷いもなく差し出された手を掴んだ。
引っ張り起こしてやるとマカはぱんぱんと尻についたゴミをはたいた。


「なにそれ。意味わかんない」

「わかんないならわかんなくていいよ。これが俺の正義だ」

「変な正義ね。そんなに私のこと大事?」


むすっとした顔のマカは俺を見ずに言った。
大事だろ、だってお前産まれたばっかのガキんちょじゃねーか。大事にするさそりゃあ。


「……別に」

「素直じゃないのはかわいくないよ、私のこと大事なくせに」

「うるせえクソガキ」



自分にとっての正義


 

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