SOUL EATER book4
□消された文字
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「黒板消しぽんぽんするのってほんっとメンドクセーよな」
「そうね」
不機嫌な声で「ぽんぽん」と言っているのが面白くて、彼の背中を見つめながらクスリと笑う。
彼は私に背を向けたまま「何笑ってんだ」と低い声で言った。
「ねぇソウルくん」
「…俺はソウルじゃねーよ」
「じゃあ名前教えてよ」
「調べようと思えば調べられるだろ」
そう言って彼は一枚のプリントを私の方に投げた。
ひらりと舞ったそれがゆっくり右往左往しながら床に落ちる。
膝を折ってそれを拾い上げ、くるりと裏返して印刷された文字を見る。
出席番号と苗字名前が書かれたそれを全て目を通すが、ソウルくんと結びつくような名前は、ない。
「26番」
「?」
「俺の出席番号」
26番。26番は確かなんて名前だったっけ。
手に持ったプリントに再度目を通そうと思えず、私はただ目を細めて一度も振り返らない彼の背中を見つめていた。
くしゃり。気づけば私はプリントを握り締めくしゃくしゃにしていて、なんとなくそれをゴミ箱に投げた。
ソウルくんは何も言わず黒板に書かれた文字を消していく。
席替えでもあったんだろう、黒板に書かれた教室の図にはクラス全員の名前が書かれていた。
「ソウルくんの名前、あなたの口から聞きたいわ」
「…ぜってー教えてやんねーよ」
そう言う彼の声は少し笑っていた。
消された文字