SOUL EATER book4

□命を懸けてでも欲しいもの
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「この世での強さってなんだろう?」

「なんだ急に」


読んでた絵本をぱたんと閉じて、マカは疑問符を浮かべた。
俺んちに入り浸るようになったマカのために買ってきた本。
それにはかわいい豚さんとクマさんの絵が描かれていて、確か内容は平和的で和やかなもの。

一体どこから強さという単語が出てきたのだろうか、と思案をめぐらせるがついに答えは出なかった。


「強さ?」

「あんたが前世で最も欲しがったものだよ」

「…それは絵本と関係あるのか?」

「全くない」

「そうかいそれはよかった。飯食ってく?」

「食べる。作れるの?」

「残念、コンビニ飯です」


笑いながら財布をひっつかみ尻ポケットに突っ込む。
最近マカからスられるからやめとけばと言われたのを思い出したが、面倒だったので尻ポケットに突っ込んだままにした。

何を食うかと聞けばマカはしばらく黙り込む。
その沈黙が予想以上に長かったので俺はため息をついて一緒にいくか?と誘った。
こくりと頷いたマカは椅子から立ち上がり俺を見上げて何か言いたげな顔をする。


「なんだ?」

「いま話そらされた」

「ああ」

「大人は卑怯ね」


マカがぷくりと頬を膨らませた。
いつも大人ぶってるくせにこんな時だけ子供になんのかよ。
どっちが卑怯なんだか。


「ええっと、なんだっけ。強さ?」

「うん、この世での強さってなに?」


ううん。難しい質問だ。低く唸りながら明後日のほうを見て考える。
難しい質問だと思ったが、答えは十数秒考えただけであっさりとたどりついた。


「金とか権力じゃねえの」

「ふうん。つまんない」


せっかく話を戻してやったというのにマカの返答は気の抜けるようなもので、俺は思わず目を細めた。


「ブラック☆スターそれ持ってないじゃん」

「俺は強くなりたい訳じゃないからな」

「前世ではあんなに強くなりたがってたのに?」

「マカ、もうその妄想話やめろ。気色悪い」

「じゃあ言い方変えるよ」


そう言うとマカの目が意地悪く光る。
別にいいと言いたかったはそれを許さないマカの雰囲気に気圧されて黙って聞くことにした。


「ブラック☆スターはそんなに弱いのに強くなりたくないの?」


聞かなきゃよかった。
睨んでもマカはうろたえず俺を見つめる。
まっすぐな瞳に耐え切れず俺は視線をはずした。
それを待っていたかのようにマカが「よっわ」と呟く。
うるせえと返した俺の声は酷く小さいものだった。


「なにも強さは金と権力だけってわけじゃないよ」


ぴくりと体が反応する。


「ブラック☆スター、弱っちいから私が守ってやる」


にっと笑うマカの言葉に全身の力が抜ける。


「…はあ?」

「私が、守ってやる。任せとけ」


全く意味のわかんねえことを自信有りげに言い放つ。
子供の頃って自分もそうだったよなぁと少し懐かしく思った。


「んじゃあ守られようかね」

「…ほんっと、ブラック☆スターらしくない。」

「ガキのかわいい提案に乗ってやってんだろ」



命を懸けてでも欲しいもの



 

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